ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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炭焼田峠

★★

 

炭焼田峠の前説

19992月県境にかかる炭焼田峠に待望のトンネルが開通し大幅な時短が図られた。歩行者用通路も確保された近代的な炭焼田トンネルにわざわざ峠を越える者は皆無に等しい。普通車同士の離合はなんとかこなせる1.5車線の幅員も大型車が進入した際は、それなりに苦労を強いられたであろう事は大きく取られた待避所からも想像に難くない。険しさは微塵も感じられず、何だかな〜という中途半端な印象は拒めないが、現役当時のままの状態を保っている所に救いを見出す事ができる。

 

炭焼田峠

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喧騒的な浜名湖の畔から逃げるようにして山中へと分け入れば、そこには人の気配を全く感じない空間が広がり、想像以上の落差に今度はむしょうに人恋しくなったりする訳だが、広がる茶畑のどこを見渡しても人影はなく、時折現れる対向車が場の空気を一瞬は乱すも、その後はまた恐ろしいほどの静寂に支配される。それが名も無き田舎道だったら違和感も無いのだろうが2車線の快走路、それも国道となると話は別だ。

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のどかな田園風景の中、緩い勾配の坂をジリジリと上り詰めると峠に達する。峠と言っても遠くからターゲットを確認し、目測で相手との距離を見定めながらアプローチし、狙い通りの場所で獲物を捉えられるといったゲーム性とは無縁で、突然視界前方に現れる近代的なトンネルを迎える事で峠に達した事を知らされるというもので峠に至る過程の面白味には欠ける。

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しかしトンネル脇から延びる旧道には当然食い付く訳で、何だかんだ言いながらも、ゲートのひとつもなく、すんなり通過できる事に内心おいしいと思っていたりするのである。旧道に進路を取ればトンネルから見て大きく左へと避け始め、あらぬ方向へと走り出す。現役当時の物は全て撤去されているだろうという予測に反し、なんといきなりおにぎりが現れたのには驚いた。

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ここに至る過程で陽射しを遮るものなど何もない開放的な状況であったものが、ここに来て鬱蒼とした森の中を通り抜け、勾配もそれなりある事で峠らしさが徐々に伝わってきた。アスファルトの輻射熱も無く、ひんやりとした空気が漂う旧道の先に炭焼田峠はあっけなくその姿を現した。ブーメランのような形状をした峠は当然その先が見えない。

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このように先の見えない峠は見通しが悪いという事だけでなく、1ショットでは現場の様子が伝わり難いというマイナス要因も手伝って私的に好みではないのだが、峠にこんこんと湧き出す清水というプラス要因と相殺され、印象的には悪くない。峠には県境を示す近代的な白看がそのまま残っていたり、道中はおにぎりやカーブミラーなど道路遺構が撤去されずに、現役時代のままの状態であった事も評価に値する。

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峠付近のみは2車線が確保され、トンネルが開通するまでは喧騒的であったと思われる炭焼田峠も今ではその存在自体もすっかり忘れ去られるほど寂れてしまっているが、峠の清水を利用して珈琲ブレイクなんて現役時では考えられない贅沢なひと時を過ごせるのも旧道愛好者の特権と言える。因みに僕はこの日、炭焼田峠の清水を利用して蕎麦を茹で、ざる蕎麦を食した。

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それはもう至極のひと時で、旧道とは言え、国道の路上で食すざる蕎麦は贅沢の極みと言える。ただ、誰も通らないであろうと油断し、白ネギを刻んでいるシーンを1台の車に哀れんだ目で流し見されたのは痛かった。旧国道炭焼田峠にて白昼堂々と白ネギを刻む路上生活感丸出しの道路格闘家、またひとつ伝説を残し僕はこの地を後にした。

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