ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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石原坂

★★★

 

石原坂の前説

現在は石原坂トンネルの開通によって峠を意識する事なく快適に通り抜け可能な路線に生まれ変わっているが、かつては1.5車線幅の見通しの悪い狭い山道であった。峠から前後の視界は全く開けないが、現役時代の標識類がそのままの状態で放置され、それらが侵食し続ける植物と一体化し哀愁漂う姿はひとつの芸術的作品として成立している。派手さは全く無く決して主役を張れる物件ではないが、峠のイロハをそつなく標準装備している石原坂は峠道の入門編にぴったりの峠だ。

 

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僕は初めてこの地を訪れた時、画面やや右よりに位置する山脈の一番低いポイントが峠に違いないと踏んだ。それは再びこうして同じ場所に立った今、どこが本当の峠であるかを把握しているにも関わらず、やはり真正面に聳える山脈の右側へ意識が向いてしまうのは、当路線に仕掛けられたトリックのせいだろう。これが実に巧妙だ。本当の峠は画像の中にはないのだ。

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これまでの経験上その先に立ちはだかる山脈のウィークポイントに狙いを定めるのが定説である。近年開通した2車線の現道は大きく左へ弧を描き、やがて視界から消えていった。旧道は尚も山塊の懐目指し、寸分の狂いもなく一直線に突き進む。幅員は1.5車線で、普通車同士の離合がやっとの狭い道が続く。沿道には人家が密集し、つい数年前まではこの道が主役であった事を窺わせる。一見どこにでもあるような平凡な直線路もどこか街道の匂いがした。

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確たる証拠はない。目の前に展開する光景を目に焼き付け、静かに目を閉じる。砂利敷きに木製の電柱、そこを馬車がゆっくりと通り過ぎて行く。勿論それはセピア色した空想の世界。しかしそれは目の前の現実と照らし合わせても、何等違和感は無かった。断崖の山肌に取り付く道は皆無で、それまで馬鹿正直に真っ直ぐ延びてきた道も、とうとう左90度へ大きく進行方向を変えた。

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現道が先に左へ消えていったが、旧道もその後を追う。ただ両者の決定的な違いはその高低差にあった。旧道はほとんど陽の差し込まない薄暗い森の中を迷走し、ひたすら高度を増す。それも離合不能箇所を含むくそ狭い山道でだ。遥か眼下の地表から届く現道を走行する車両の爆音からは、如何ともし難い距離感を感じたし、一瞬にして消えて行くスピード感から、いかに当路線が非効率極まりない道程かが良く分かった。

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かつての1.5車線も年間数センチ程度の速さで、旧道を覆い尽くそうとする自然の猛威により、現在では完全1車線という区間が少なくない。峠道のほぼ全線に渡り動物避けの柵が張り巡らされている事から、当路線は現在でも管理されているようだ。先の見えぬ状態のまま突如峠を迎える訳だが、切り通しの峠は植生著しく、普通車1台がピッタンコサイズの狭く寂しげな姿をしていた。

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忘れ去られた峠石原坂。長きに渡り交通の要として活躍してきた峠道も、末期は越す者に苦痛を与える厄介者扱いとされ、スピード時代に対応し感謝される現道とは裏腹に、お荷物的存在として軽視される旧道石原坂。人々はいつから感謝という気持ちを忘れてしまったのだろうか?そしていつ頃から感謝の言葉を素直に口にする事を、恥じるようになってしまったのだろうか?

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やはりお世話になった事に対してありがとうと素直に言えるって、生きて行く上でとても大事な事だと思います。たった数回しか利用していない石原坂ですが、地域住民に代わって僕は声を大にし、日頃お世話になっている事への感謝の念を述べたいと思います。

ありがとう

インリンオブジョイトイ!

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