ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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矢立峠

 

矢立峠の前説

日本海に面する県南の本荘と県北の鷹巣とを結ぶ一般国道105号線。主役の座を海岸線の国道7号線に譲り、自身は一路内陸へと矛先を向ける。中継地に城下町角館やマタギの里阿仁といった地味な観光地が名を連ねるが、ほぼ全線を通してパッとしない路線である事は否めない。南部に至っては見るべき点がほとんどなく、丘陵地帯のような低山を縫う地味なローカル国道は、峠越えにおいても地味なんである。青森との県境に同名の峠があるが優劣を競うまでもなく、知名度においてはその足元にも及ばぬ県南の矢立峠をご覧頂こう。

 

矢立峠

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秋田新幹線に秋田自動車道と高速交通網が確立され、首都圏から片道で丸一日を要したのも今は昔。すっかり日帰り圏内と化し何かと忙しくなった都市部とは対照的に、一歩山間部へと踏み込めば、そこは時代に取り残されたかのような田舎道が平然と続き、格差社会と叫ばれて久しいが、こと道路においてもその格差は広がる一方である。

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未通に狭路にトンネル待ちと資金難に泣く道路がある一方で、当路線は国からのお墨付きを得た事でそこそこの整備が約束され、今ではそれ相応の出来にある。矢立峠を出すまでもなく沿道には分断された旧道の欠片が幾つも見られ、全線を通して快走路に生まれ変わった国道105号線も、その昔は大型車が敬遠するような国道とは名ばかりの脆弱な路線であったに違いない。

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一切の装飾を持たぬ平成産特有の矢立トンネルが山肌に口を開け幅広の二車線路を呑み込む僅か手前に、稜線に向かって駆け上がるアスファルトが見え隠れする。トンネルの脇に旧道ありのセオリー通り、旧規格の狭い二車線路が山肌を割って延びている。

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標高が141mと低く難所とは程遠い淡泊な地形だが、盛り土と堀割によって抜本的な改修が施されている。消えかけた追い越し禁止のセンターラインを追って進入すると、道路脇に佇む複数の付帯設備が視界に飛び込んできた。おにぎりこそ外されていたものの、制限標識や警戒標識など往年の置き土産は豊富なラインナップで皆様のお越しを心よりお待ち申しあげておられた。

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緩いコーナーを過ぎると直ちに現れる深い切り通しが市界を一跨ぎしている。そこは大型車同士の離合がやっとの国道にしては狭い幅員で、現在のようにノンストップで駆け抜けるという訳にはゆかない厳しい線形である。茶屋とか駐車場などとは無縁の丘越えに等しい矢立峠を越えれば、足早に現道を走り去る車両の姿を眼下に捉える。随分あっさりした峠だな。

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呆気ないほど簡単に越せる矢立峠に物足りなさを感じたのも束の間、いつの間にやら僕は道路の隅に追いやられ、先は草ぼうぼうで二車線のアスファルトはどこへやら、果ては側溝によって旧道は完全に寸断されていた。

道、無いやんけ〜!

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荷物をばらして強引に引き摺り下ろす事も真剣に検討したが、木端微塵に吹き飛び残骸さえ残らぬ現道の法面を滑り降りたところでいかがなものかと?と自問自答した結果、即撤収と相成った。トンネルと切り通しが仲良く並び絵的にはOKでも、通り抜けが叶わず何とも歯痒い矢立峠であった。

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