ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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小原峠

★★★

 

小原峠の前説

和歌山県の田辺市と三重県の尾鷲市を結ぶ国道311号線は、全通が21世紀に入ってからと遅咲きであり、やや時代遅れの感は否めないローカル国道である。R311はいまいちパッとしない路線であったが、熊野古道が世界遺産に指定された事で、一夜にして注目の的となった。何故ならば国道311号線は熊野古道のひとつ中辺路を踏襲する形で、紀伊半島の東西を結んでいるからに他ならない。バイパスの整備が進み多数の旧道が誕生した中辺路の中心部に小原峠はある。注意していないと気付かぬほど目立たぬ地味な小原峠の今を訪ねた。

 

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平日でも観光バスが大挙して押し寄せるここは、逢阪峠より小広峠に至るバイパスの中間地点にあたる近露という集落である。本来ならば人っ子一人遭遇せぬような静かな里山であるはずなのだが、現地に到着した大型観光バスよりベルトコンベア式に次々とジジババダンサーズが吐き出され、一定時間を経て再び彼等を呑み込んだバスは次なる目的地へ向けて足早に走り去る。

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その一連の動きは日中一杯続き、彼等は休む事を知らない。観光客もジジババなら出迎える茶屋の従業員も皆ジジババで、高齢化社会が加速度的に進む我が国の近未来象がここにある。喧騒とは無縁なはずの集落が、ほぼ毎日のようにお祭り騒ぎなのだから違和感ありありではあるのだが、人口流出が止まらない地方の片田舎でも、戦略によってはこれだけ人が呼べるという成功モデルとして見習うべき点は多い。

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ただ活気があるのは一部の整備された場所に限り、一度集落を離れると辺りは閑散としている。般ピーが見向きもしないこの路線の肩書は単なる市道ではあるけれどその昔は国道311号線を名乗り、この地域の生命線として長きに渡り活躍した歴史ある旧国道である。

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僕がこの道を初めて走破したのが1991年。その時点においてこの道は路線バスも走る現役の国道であった。バイパスの整備と合わせて旧道も再整備された現在はすっかり見違えっていて当時の面影を失っている部分もあるが、小原峠は相変わらず1.5車線の狭い切り通しとしてそこに存在した。

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峠である事を意識していなければ見過ごしてしまうほどの目立たぬ浅い切り通しではあるが、両壁面は年代モノの石垣に覆われている。これが明治由来の代物である事はあまり知られていないが、熊野古道をお目当てに来た観光客にとってはどうでもいい事かも知れない。

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だが江戸以前より明治に重きを置く僕としては、ジジババダンサーズが素通りする小原峠の低い石垣にこそ食指が動くのである。小原峠の狭い切り通しの間を、この無駄に曲がるグニャグニャ道を、その昔はボンネットバスが出来損ないのエンジンを唸らせ、懸命に駆け上がっていったのだ。

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ここが唯一の路線であるが故の宿命でもあるのだが、鉄道の通わぬ中辺路に市街地より届く唯一の公共交通機関として、乗合バスがこの狭路を力強く疾走したその事に僕は思いを馳せるのである。また下地となるこの道が明治32年に開設された馬車道である事を重ね合わせれば、俄然食指は旧国道へと動くのである。

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