ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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中山峠

 

中山峠の取扱説明書

当初通過するはずであったこの峠であったが豪快な切り通しの頭上をふと見上げればそこにガードレールだけが見えた。旧道を拡幅したのかと思いきやしっかりと旧道はそのまま残し真横に巨大なオープンカットを施した現道の中山峠。それに対しただでさえインパクトに欠ける旧道の中山峠は景観が一変してしまった事で魅力半減、いくら峠にまつわる興味深いエピソードがあったとしても現場の状況から最低ランクを覆すのはほぼ無理だろう。

 

中山峠[ORRの道路調査報告書]

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全国に中山と名の付く峠は数あれど、この県道にある中山峠は知名度の低さではピカ一だろう。高速道路と絡みつくように走る県道には人家が皆無に等しく寂しい山中走行なのだが近年大改修が行われたらしく主要県道に相応しい2車線の快走路に生まれ変わっており、高速にもヒケを取らない高速巡航が可能となっている。

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現道脇には旧道の残骸が数多く残っており、この道に精通していなくとも近年大幅なテコ入れが行われた事は容易に判断できる。時折交差する高速道路以外は全く人工物が見当たらない樹林地帯はいったい現在位置はどの辺りなのか、どの方角へ向かっているのか、私はここへ何しに来たのか、今朝何を食べたのかさえ忘れてしまうほどの深い樹海で、その不安から全て解き放たれるのがこの中山峠から周辺の山々を見渡せた時だ。

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早々と高速は暗い穴の中に身を潜めるが、県道はグッと首をもたげるように浮上を開始する。緑の大海原から頭ひとつ出た世界はそれまでの閉ざされた世界とは一変し天を仰ぎ、周囲の山々を一瞬にして支配下に置いた。眼下に連なる山々を見てまさに今樹海の真っ只中に居る事を再認識させられる。

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追い越し車線のある現道は豪快な切り通しにて峠越えを容易にさせ、速度を落とす事なく高速巡航で峠に差し掛かり、峠越えを意識させる事ない。それに比べて旧道ときたらどうだ、現道との分岐からいきなり狭い1.5車線の山道で見通しの悪いコーナーはどう足掻いても低速巡航は避けられそうにない。

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それも旧道はすぐに行き止まりとなり、その先は現道にごっそりやられてしまっていて、実にその8割以上が消失し、残った区間には松の苗木などが植林されもはや徒歩での通行もままならない程破壊され尽くされている。一旦現道に戻り少し進んだ地点で再び取り付けを発見し、再度アタックするとあっさり中山峠に到達してしまった。峠前後の旧道部は現道にほとんどを奪われていたが中山峠だけは何とか残されていた。

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現在は放置され荒れ果てているが本来は普通車同士の離合が可能な幅員であったようだ。かなり昔から使われていたのだろうか?峠には開通記念碑らしきものが建立されていた。現道は真横に位置し十数m深く掘り下げられた状態で存在し旧道と並走している。現役当時から駐車スペースなどは無かった模様でただ通過するだけの峠であったようだ。

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新旧二つの道は前進する毎に落差を縮めやがて合流するというよりは交差して旧道はその後もスラロームを描くのに対し現道が中央を効率よくストレートで通される事により、分断された旧道が両側に散りばめられ下りにもその残骸が数多く見て取れる。中山峠は元々峠としてのランクは高い方ではないが現道が悪さした事により更に評価を下げる残念な結果となってしまった。

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