ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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口廣谷隧道(口広隧道)

 

口廣谷隧道(口広隧道)の取扱説明書

限りなく岐阜県に近い県南の山中に、支流より集めた天然水をなみなみと湛える天空の人造湖有峰湖。毎年のように発生していた洪水を防ぐ目的で造成された巨大ダムは、安定した水量の供給という治水に加え、水力発電による巨大エネルギーの抽出と利水にも成功し、県立公園内という恵まれた地理的条件も満たしているため、水資源のみならず観光資源としてもその期待は大きい。その有峰湖を取り巻く全ての路線が林道によって占められ、小見線、湖周線、大多和線、小口川線、東谷線の五線で構成される周回林道は、その総称を有峰林道といい順次その枝葉を伸ばしてきた。中でも開通時の昭和37年から供用されている和田川沿いの絶壁をへばり付くように走る小見線の改良が近年著しく、数年程前に戦力外通告を下された口廣谷隧道の今を訪ねた。

 

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刺され鉄骨!カーテン状に波を打つ垂直に近い渓谷の凹み部分に、見慣れぬ風貌の赤い鉄骨が谷間に突き刺さり、それはあたかも有史以前よりそこに構えているかのように有峰林道小見線に浸透している。そこにかつてのストレスを感じない代わりに、大いなる違和感を覚えた。こんな二車線の快走路じゃねーべ。

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見れば橋の土台より先に穴のようなものが口を開けているのが見える。口広谷橋の架設が平成12年3月。となるとやはり以前通過した際は、今にも土砂に埋もれそうなあの小さな穴を潜っていた事になる。人為的に削られた壁面は明らかに旧道の跡なのだが、かつての路上には残土が放り込まれ、足元は全くおぼつかず

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単車で云々というレベルにない。かつての路面は2m近くも嵩上げされ、立ち位置が扁額の高さに等しい。土砂は坑門の手前まで迫っていたが、封鎖という最悪の措置だけは免れていた。ボックスカルバート調の坑門には一応扁額が備わり、この短隧道の名称が口広隧道である事を教えてくれた。絶壁に取り残された

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厚さが30cmにも及ぶ分厚いコンクリ壁によって固められた空間は、米ソ冷戦時代に密かに用意された核シェルターのようだ。洞内は急激なカーブを描き対向から漏れ届く明かりは僅かしかなく、ほとんどは壁面に埋め込まれた反射板が頼りの狭い通路である。その昔は大型観光バス1台がギリギリガールズのこの狭い穴の

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通行を、車種を問わず全車両が余儀なくされた。僕の記憶では四輪同士の離合不能区間が長らく続き、プチ渋滞がそこかしこで発生する酷い道という印象は今も鮮明に残る。大型車に捕まったが最後、金魚の糞状態と化した車列の一団として、県道43号富山上滝立山線まで拘束、つまり下界まで延々とトゥゲザー

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しなければならないのだ。それが今ではセンターラインが敷かれる二車線の快走区間が増え、現在進行形の拡張工事が昔の面影を一掃するのも時間の問題だろう。隧道の後半はアーチを描き坑門も一般的な門構えで、その風貌は有峰林道が開通した昭和37年当時のままである。扁額には口廣谷隧道とあり出入口で

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その名称が異なるが、アーチ状の門が竣工時のもので、ボックス状が後年になって改修されたのは明らかで、何故名称の食い違いが生じたのかは不明である。砂防ダムと垂直壁に挟まれるようにして顔を覗かせる小さな穴が、僅か数年前まで唯一の路線とは悪い冗談のようにも映るが、経験からもこれが事実なんだな。

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