ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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堤石隧道

★★★

 

堤石隧道の取扱説明書

静岡県の牧之原から愛知県の蒲郡を結ぶ国道437号線。海沿いは国道1号線に任せ、自身は奥三河の山岳路へと活路を見出すのだが、そこには幾つかの難所が立ちはだかり、中でも岩古谷山の直下に突かれた堤石隧道は当路線の最難所として名高い。竣工から実に70年を経た老雄が、現役の国道トンネルとしていまだ主役を張っているのは驚き以外の何ものでもないが、残念ながらその片側は失われて久しい。

 

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1.5〜2車線の幅員を断続的に繰り返す酷道437号線において、幾つか立ちはだかる難所の中でも堤石峠は最高峰に位置する。どのような隧道なのかかなり以前から興味があった。前後がどんなに酷道だったとしても隧道だけは立派である事が多い中、堤石隧道もそのようなものだと想像された。

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目の前に現れた隧道は確かに立派であった。しかし眼前に口を開けるのは本来のポータルではなく、巨大なボックスカルパートであった。乱立する警戒標識が何やら物々しい雰囲気を醸し出し、近寄り難いオーラを発している。ただでさえ前面に突き出す後付けのコンクリ塊が威圧的なのに、制限標識やらがそれに拍車をかけているのだ。

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本来の坑門は現ポータルより50mほど入り込んだ地点でお目見えした。現道ゆえにじっくりと観察する余裕はないが、コンクリ製である事と昭和中期の量産タイプとは一線を画している点だけはパッと見でも判断できた。更に内部は凄かった。

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進入当初こそ滑らかであった内壁も、いつしかモルタル吹き付けの薄化粧に止まる荒々しい壁面へと変化し、不気味な空間を演出していた。気持ち微妙に長い間隔で設置された照明が不気味さを1.5割増しとし、さながらそれは生きる廃隧道といった様相である。

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振り返ればこちら側の坑門は一切手が加えられておらず、竣工当時の状態を維持しているようだ。一見平凡なコンクリ隧道に見えるが、扁額を見れば竣工はなんと昭和9年!笠石はモドキを超越している上、リングアーチに至っては石が埋め込まれており、アーチ環上部には迫石も配される極上物件。

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隧道にコンクリが使用され始めたのが昭和初期であるから、堤石隧道はその奔りと言える大変貴重な物件である。今でこそコンクリにそのほとんどを覆われるも、竣工当初より戦後にかけては完全な素掘り状で供用されていたに違いない。軽自動車二台が並んでやっとの幅員しか持たぬ堤石隧道であるが竣工当時は相当期待されて開削されたものと思われる。

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その事は坑門前に立つ石碑にも見て取れる。大型車同士の内部離合は平成の世においても実現せず、堤石隧道は既存の隧道に手を加える形で現在も供用されているが、国道437号線のボトルネックである事は言うまでもない。

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