ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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杉谷隧道

★★★

 

杉谷隧道の取扱説明書

奈良県と三重県を結ぶ3桁国道の最難所である高見峠。峠ばかりが注目され、ほとんど陽の当る事のない杉谷隧道にスポットを当ててみたい。何故杉谷隧道がほとんどしかってぃんぐに近いや軽く扱われるのか今の僕には理解できない。心霊スポットとしてのトンネルではなく道路遺構、土木建築としての観点、近代交通の歴史という視点から人々がトンネルを見る時代が到来した時に杉谷隧道は本来の受けるべき正当な評価を受け、その存在を余す事なく世に知らしめるだろう。

 

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ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

この国道最難所の峠である高見峠へ至る過程に問題の杉谷隧道はある。現在はこの真下に高見トンネルという2000mに及ぶ長大トンネルによってものの数秒で通り抜ける事が出来、通常のドライブであればここがかつて難所の峠であった事さえ微塵も感じさせない程快適な道に生まれ変わっている。峠越えからトンネルに切り替わって早20年が経過しここの旧道もすっかり油がのりきった感がある。

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高見峠を越えたのは今回で3回目だろうか。何故か夜間に通過する事が多く高見トンネルを利用する事の方が圧倒的に多い。僕も例外ではなくその存在は知りつつも、これまで杉谷隧道には全く関心が無かった。事実高見峠の写真は残っていても杉谷隧道に関しての記録は一切手元には無い。

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ただ遠い記憶の彼方に峠へ至る過程に小さなトンネルがあったという程度のうろ覚えでしかなく、まじまじと見るのは今回が初めてであった。目の前に現れた杉本隧道は今の僕の目には光り輝いて見えた。現代の半円型をしたトンネルに対しカマボコ型をしたコンクリの隧道はまさしく昭和初期から中期にかけてのものだ。この国道の歴史を紐解けばそれが戦後まもなくの竣工である事が分かる。

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坑門はネズミにかじられてしまったのか両耳が消失しドラえもん状態となっているのも何とも微笑ましいではないか。内部は路面を含む全体がコンクリで覆われていて落盤などはなく保存状態は実に良好だ。カマボコ型は見ての通りやや地上から内壁はやや垂直に近い形で上部へ達しエッジを利かせて天井は水平に近い形となっている。

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ただ天井は真っ平らという訳ではなく、ひたすら滑らかな曲線を描く。強度という点においてはやや問題があるのではないかと素人でも思う構造で、現代のトンネルはまず間違いなく正確な半円を描いている訳だが、2tトラックなどの箱ものがついた自動車同士を内部離合させようとした場合どうしても半円型だと余裕を持った半径のトンネルでないと車体上部角を擦るもしくは引っ掛かるという事になりかねない。

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だがかまぼこ型であれば、ある程度の高さの車同士でも内部離合が可能という点において実に合理的な造りであり、本来コンクリ製の無機質な隧道には全く食指が動かない僕でもこの昭和初期から中期にかけて造られたかまぼこ型コンクリ製の隧道は石組みのトンネルと同等かそれ以上の評価をしている程、個人的にはお気に入りである。

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多分この違いは一般の方には分からないかも知れない。50m先の辻ちゃんと加護ちゃんは僕も含めて普通の人は見分けつかないでしょ。ってゆーかどっちでもいいじゃんって感じだと思うんですけど杉谷隧道も分かる人には分かる、分からない人はいつまでたっても分からないという物件でした。

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