ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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坂折隧道

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坂折隧道の取扱説明書

日本海側の益田と瀬戸内の岩国を結ぶ国道187号線は、分水嶺の傍示ヶ峠377mが最難所という高低差をほとんど感じさせない山間の集落を繋ぐローカル国道で、爽快なドライブを約束する快走路でもある。道中に幾つか見られるトンネル群はどれも必要に迫られたものではなく、時短に安全それに快適性を追求したもので、当初は難産の末に産み落とされた遠い過去の遺物とは縁遠い路線と思われたが、何気ない場所に昭和初期の置き土産がひっそりと眠っていた。この界隈を日常的に利用する者ならば、その存在は否応無しに視界へと飛び込んでくる坂折隧道。その今をご覧頂こう。

 

坂折隧道

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山陰と山陽を南北に結ぶ連絡道路の中では、比較的穏やかなルートととして知られる国道187号線。全道程の九割強を河川と共にし、北の高津川と南の錦川の両大河に寄り添うようにして穏やかな道が続く。低山の隙間を縫う爽快なドライブルートはほとんどトンネルを必要とせず、現在口を開けているものの大半が

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車種を選ばぬ近代的なトンネルな訳だが、新坂折トンネルを通過する際明らかに旧道と思わしき引き込み線が僕の目に飛び込んできた。追い越し禁止のセンターラインに導かれるその先には、間違いなく旧隧道が眠っているはず。それは思いの外呆気なく僕を迎え入れた。隧道の頭上は手の届きそうな位置まで稜線が

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迫り、現代であれば間違いなくオープンカットされるパターンである。隧道の上に長い年月をかけて崩れてきた土砂が堆積し、現在のような形状に落ち着いた、そんな状態である。ポータル全体に亀裂のような筋が走り、遠目からは石組みのようで一瞬お宝隧道かと思ったが、構造物のほぼ全体がコンクリートに覆われ

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期待外れではあったものの、落胆するまでには至らない。新坂折トンネルへとバトンを渡す昭和61年まで現役で活躍した坂折隧道は、並々ならぬ苦労の跡が随所に見られた。どう見ても二車線に足りない幅員なのに、追い越し禁止のセンターラインは隧道内まで追いかけ、あたかもそこが二車線であるかのような

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坂折マジックに、大型車は幾度となく泣かされた事だろう。また照明設備は充実しているが、肝心の歩行者に対する配慮は最後まで成されなかったようだ。大型車同士の内部離合を昭和末期まで許さなかった坂折隧道。現在は二次利用されているので通り抜けは叶わない。キノコの山と共に何故かビールの空瓶が

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高く積み上げられている為、内部の様子が一部しか覗き見る事はできない。内壁の表面は僅かな波状を描き、完成度の低さは素人目にも歴然である。また坑門の笠石にリングアーチ、石積みを模したデザインと明らかに年代モノの予感がする。少なくとも高度経済成長期の量産タイプとは異質の意匠を持つ坂折隧道の

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扁額に疑問を解消する糸口が見つかるかも知れない。昭和13年竣工。それは当路線が二級国道に指定される昭和28よりずっと以前から口を開け、半世紀以上もの長きに渡り活躍してきた事を示していた。こんな場所にも何気に昭和初期の貴重な土木遺産が眠っていたのである。

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