ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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梅ノ木隧道

★★★

 

梅ノ木隧道の取扱説明書

梅ノ木トンネルの開通が20033月だから旧道化してまだ間もない梅ノ木隧道は現在でも通行可能であり照明も点灯したままだ。しかし残念な事に坑門は余りにも一般的なコンクリで修復されており、正直その姿に絶望感を抱いた。しかし内部を見た全てが一変する。梅ノ木隧道は無機質な坑門という弱点を相殺してしまう程の実力を内に秘めていたのである。

 

梅ノ木隧道

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

日本海に面する北長門コバルトラインから内陸部に進路を取り、一路梅の木隧道を目指す。初通過であるから期待は当然高まる訳だが、容赦なく打ちつける雨に現地へ向かうにあたっての意気込みも次第に薄れ、現道から派生する旧道を発見した時点で既にヤル気は完全に失っていた。夏までに溜め込んだ報告書の数は尋常ではなく挽回はほぼ不可能である事は

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承知しつつも最後の望みを賭け秋の長期取材に挑んだ訳だが物件数を順調に消化出来る程世の中は甘くない。また取材数は天候に委ねられ、まさに自然との闘いでもあった。この日も朝から小雨が断続的に降り続くも小康状態のチャンスを窺いつつズブ濡れのまま山陰地方を迷走した。ひとつでも多くの物件を掘り起こしたい。そう願いつつも良質な物件が

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そうそう転がっているはずもなく没ネタ物件を掴まされる事も結構あった。幸い梅の木隧道に到着してからは5分程で霧雨程度まで回復し撮影可能となった時点で取材を開始した。巨大な掘割にて隧道まで導かれ、その先に現れた梅の木隧道は苦労してきた割にはあまりにも一般的なコンクリ隧道で、坑門を見た瞬間全てのヤル気を失った。あ〜あ今回も没ネタか

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と諦めかけたその時、奥に何かが見えた。テボッチャーだ!もう坑門などはどうでもいい。遠目からもかなり凹凸の激しい内壁に半ば興奮気味に接近する類人猿は見た。梅の木隧道の中間部は大きく掘り抜かれ普通車同士の内部離合を可能としていたのだ。しかもコンクリ噴き付けとは言え現役最後まで荒々しいテボッチャーのままだったのである。両坑門とも

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非常に大人しい造りでありながら巨大なホールを中央に設けた梅の木隧道に、それまで憂鬱だった気分は全て吹き飛んでいた。両坑口とも進入してしばらくは滑らかな内壁で幅員は普通車と歩行者の離合が可能な程度の狭い1.5車線路なにの対し中央部には想像を遥かに超える巨大なホールが設置されていて普通車の内部離合を許していた。それも滑らかに

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しようとした痕跡は全く見られず、掘削したままの原型に近い状態にコンクリを噴き付けしただけの実に荒々しい造りと、綺麗にアスファルト舗装された路面のミスマッチ、それに均等に配列されたビームが加わって、最早梅の木隧道はひとつの芸術作品として仕上がっている。内壁の一部がテボッチャーであっても入口から出口まで一定の幅であったならば

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評価は下げざるを得なかっただろう。坑門はシャープな造りで限りなく現代のトンネルに近い状態にまで補修されてしまっているのは残念であるが隧道前後の掘割の一部も荒削りなままの箇所があり、またコンクリで補修された側壁法面にも苔が密生し、いい味を出しているのもポイントアップに貢献している。意外性に富む梅ノ木隧道であった。

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