ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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中ノ川隧道

 

中ノ川隧道の取扱説明書

愛媛県松山市と高知県高知市の両県庁所在地を結ぶ国道56号線は、九州へ向かい細く長く延びる佐田岬半島や太平洋に向かって膨らむ足摺岬を他のローカル国道に任せ、自身はほぼ海岸沿いを伝いながら各河川の河口に開けた港町を直接結ぶ経済コースを取るも、その道程はけして平坦ではない。むしろ海岸線を正確になぞる事を嫌い、最短コースとして山中に活路を見出した事で、いくつもの尾根を跨ぎ無数の風穴を開ける事となった。高知との県境に程近い御荘の外れにある中ノ川隧道も、宿毛湾を回避し国道が山側に進路を取った結果の産物で、その容姿はズバリ昭和中期の大量生産型で特筆すべき点はない。かつては主役を張った主要幹線国道の隧道が一線を退き、現道の車窓からバッチリ見える御隠居の姿は哀愁が漂い、ここを通るたびについつい旧道へと誘われるのである。

 

中ノ川隧道

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平成17年3月に起きた特急南風17号の駅舎衝突事故が記憶に新しい宿毛駅。鉄路は土佐くろしお鉄道が宿毛まで足を延ばすも、一大レジャースポットの御荘までは届いていない。それより先は宇和島までバスが主役を担う。陸路の主体が路線バスのみである事が道路の高規格化を促進し、整備状況は凡そ四国離れした

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立派な道路網が張り巡らされている。宿毛より御荘へ至る主要道路は二手に分かれるが、海岸線を県道7号線に任せ国道は県境を山間部で跨ぐ。旧道は今でも立派に通用する幅員を有し、障害を取り除く為に削り出した法面の規模も半端ではない。現道を二度アンダーパスする旧道が現役の国道56号線で、頭上を跨ぐのが

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高速道路と言わんばかりの高規格ぶりで、ある程度地形に逆らった旧道も時代遅れの遺物に映るほど、現道は巨大な橋桁を幾つも連ねた高架橋とオープンカットによって谷を一跨ぎにしている。ここまで地形を無視するとそれはそれで爽快である。旧道も大型車同士の離合を許す二車線を維持しており、けして現道に引けを

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取らない規格なのだが、その抵抗も中ノ川隧道までであった。坑門手前まで歩道を備えていないとは言え、余白部分にはチャリや歩行者に対応する余裕がまだあった。しかし中ノ川隧道には歩行者やチャリはおろか、車種によっては車両同士の離合さえ許さぬ厳しい制限が設けられていた。高さ制限に幅員制限、それに

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歩行者注意など標識オンパレードであってもおかしくはない一昔前の規格。それがボトルネックとなりハイウェイのような現在のバイパスを生み出したのだ。御覧のように普通車同士の内部離合は楽勝であるが、大型車が一台進入しただけでたちまち減速してしまうような精神的圧迫感は否めず、現役時代は現実に大型ダンプ

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などの車両同士の内部離合を許さず、たびたびプチ渋滞を引き起こしていた様子が垣間見える。トラーレーが通ればひとたまりもない狭さで、近所の住民もよっぽどの事がない限り近づかなかったのではないか。扁額には昭和36年竣工とあり、時代をもう少し遡っていれば個性溢れる意匠を身に纏っていたかも知れず、また

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もう少しずれていれば今も国道として主役を張ったかも知れない中ノ川隧道は、デザイン的にも実規格としても中途半端なまま役目を終えた。旧道区間に人家が皆無にもかかわらず現在も照明が点灯しているのは何故だろう?僕にはそれが不完全燃焼のまま一線を退かざるを得なかった中ノ川隧道の最後の抵抗に映った。

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