ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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箕ヶ岩隧道(昭和トンネル)

★★

 

箕ヶ岩隧道(昭和トンネル)の取扱説明書

国東半島を外周する道路は海岸沿いに面した外周の国道R213と、内陸部の丘陵地帯をひたすらアップダウンする内周のオレンジロードと呼ばれる広域農道の二派に分かれる。その前進はどちらも古代からある官道を踏襲し、それをなぞられたものであるが、その昔は海岸道路と呼ばれたR213は、前身が間道と呼ばれる下級道路で、明治以降になってから栄えた道である。文明開化と共にこの地にも早々と新しい風が吹き、土木事業においてそれは隧道という形をもって具現化して現れる事となる。後にトンネル製造工場と呼ばれるR213に、逸早く突かれた隧道として記録されているのが、ここ箕ヶ岩隧道とチギリメン隧道だ。その竣工年はほぼ同時期であり、国東半島に幾つか見られる古隧道の中でも1、2を争う最古参で、範囲を県全体に広げてもその価値は一向に揺るがない。とても小さく可愛らしい隧道だが、内に秘めたる真の価値ある隧道である事など今となっては誰も知る由もない。

 

箕ヶ岩隧道(昭和のトンネル)1/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

隧道に番号が振られる程トンネルが連発するこの国道で、他の隧道群とは一線を画しているのがこの箕ヶ岩隧道だ。埋立地に新設された現国道とは貯水池を挟んで並走している旧道上に存在し、現道から箕ヶ岩隧道はどの方面からでも否が応にも視界に飛び込んでくる。それは取るに足らない極々一般的な小さな穴で、般ピーでは気に留めるまでもない平凡な隧道に、足を止める人種など稀だ。

箕ヶ岩隧道(昭和のトンネル)2/ORR

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かくいう僕もそれまでその存在を認めつつも、いつでも調査が可能として今日まで安く見積もり放置してきた訳だが、当路線の大物から順に仕留めていく内に順番が回り、いよいよこの小さな隧道の調査へ着手する運びと相成った。旧国道は周防灘を右手に見ながら貯水池の真横を進み、その進路を断ち塞ぐかのように隆起する箕ヶ岩を貫通させた隧道である。かつて右手にすれすれにある貯水池は海そのものであった。

箕ヶ岩隧道(昭和のトンネル)3/ORR

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現在はかなり広範囲に埋め立てが成され、国道は見通しの良い直線路と大幅に線形が改良されたが、その昔は断崖の真下をひょろひょろと進む頼りない道筋であった。嵐の日には大波を被り通行不能に陥る事もしばしばであったと想像される。切り立つ壁面を左にかつての海を右手に見ながら旧道上を進むと、照準を定める間もなくターゲットは遥か先からその姿をあらわにし、あっけなく僕をその懐へと迎え入れた。

箕ヶ岩隧道(昭和のトンネル)4/ORR

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ここで驚くべきは内壁の仕様であった。路上から高さ1mほどがコンクリで覆われている一般的な壁面で、僕はそれが内周の全てを覆い尽くしているものと思っていた。だが天井の弧を描く半円部分は全て石を組み上げたものであったのだ。これだけ短い隧道でかなり手の込んだ仕様なのは、当路線が現役当時唯一絶対のライフラインであったからに他ならない。

箕ヶ岩隧道(昭和のトンネル)5/ORR

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隧道を抜け振り向けば、箕ヶ岩によって今にも押し潰されそうな歪な形状の坑門が待っていた。それでも尚そこにあり続けようとして踏ん張る姿は逞しいとさえ言える。坑門は上から笠石、扁額、アーチ環と一通りの装飾は兼ね備えているものの、やはり無機質なコンクリ隧道である事には変わらず、時代がもう少しずれていれば、今とは大きく異なる容姿であったのかも知れない。

箕ヶ岩隧道(昭和のトンネル)6/ORR

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扁額には竣工が昭和10年6月と刻まれており、コンクリートが使われだした昭和初期に該当する箕ヶ岩隧道は、既に70年以上が経過している事になるが、それほど古臭い印象は無く、昭和中期に坑門のみ改修された可能性は充分有り得る。尤もこの箕ヶ岩隧道は明治初期には早々とここに出現し、現在は改修後の初代とは似ても似つかぬ顔を持つが、今となってはその姿も想像する以外に手立てはない。

箕ヶ岩隧道(昭和のトンネル)7/ORR

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大型車一台を楽々通し、軽自動車同士なら内部離合も叶いそうな幅広の坑内は天井も高く、今でも国道に何等かの不具合が発生し、迂回路に指定されたとしても、交互通行にて充分使用可能なレベルにある。かつて海岸道路として人々の生活に物流全般を支えた旧R213箕ヶ岩隧道は、今でも車両の通行を許す現役の町道として活躍しているのであった。

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