ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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千之通隧道

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千之通隧道の取扱説明書

現トンネルの完成が19953月だから旧道化してまだ日が浅いと言える千之通隧道だが現トンネルは大江トンネルという名称で千之通トンネルまたは新千之通トンネルとしてその名が受け継がれる事は無かった。当初その形状に特徴があるもそれ程価値があるとは思えなかった千之通隧道だが片側坑門に残された痕跡によりかなりの大物である可能性が高まった。そしてとっくの昔に終わっているはずの旧道で僕が見たものとは。

 

千之通隧道

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この界隈においてガソリンスタンドが2軒もあるという事はある程度の人口がある町である事を意味している。またAコープがあるかどうかでその町の規模を知る事が出来る。その両方を満たす漁村から、それまで大海原しか取柄のない海岸線から一転して深い山中へと誘うロザリオ注意報が発令中のサンセットラインにおいて最も内陸部を走る区間の真っ只中に

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存在するのが千之通隧道だ。旧道と化した国道は1.5車線の頼りない道筋で、目の前の山塊目掛け地図上では直線に見える道程も実際には小刻みに緩やかなカーブを描きながら勾配の緩い状態で駆け上る。谷間を挟み対岸を豪快に開削した現道がアバヨとばかりに駆け抜けている。旧道は時間に縛られる事なく淡々とマイペースで登り続ける。稜線まではまだ手が

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届きそうにない位置で旧道は諦めたように平坦路を迎える。その先にぽっかりと口を開ける穴ひとつ。坑口手前の掘割には両側から立派な杉が聳え立ちまるで神社の境内を連想させ、現場の様子はさながら水木しげるワールドになっている。密度の濃い森に覆われた千之通隧道は昼尚薄暗く妖気が漂っているのは言う間でもない。坑口手前で対向車をやり過ごす事は

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出来ても内部離合は不可能である。サンセットラインにある旧廃隧道群の中で最も距離が長く当然照明は設置されていて現役時代は点灯していたのだろうが旧道と化した現在は9時消灯禁酒禁煙枕投げ禁止とされている。凹凸のあるテボッチャーとは違い、滑らかなコンクリの内壁から恐怖感は全く無く徒歩でも問題ないだろう。但し僕は遠慮しとくがね。

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千之通隧道最大の特徴は坑門の形状だ。上部は半円を描くも下部は斜め平面であり、強度的にどうかと思うが非常に珍しい形状をしている。と、当初は思ったのだが現在我々が見る事の出来る千之通隧道は後年修復された姿であり、初代はかなり興味深いお宝隧道であった可能性が非常に高い。というのも全体的にはコンクリで覆われた坑口断面だがリングアーチに

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薄くなりつつも僅かだが石組みが確認出来るのだ。どうやらレンガ調のサイズで二段巻きされていたようだ。反対側はコンクリでベタ塗りされたのかその痕跡さえほぼ失われるも、こちら側は完全に消し去られずに初代の形跡がしっかりと残っていたのだ。後年全体的に補修され、中でも内部は厚めにコンクリの層を設けた事で初代よりも内径が一回り小さくなって

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しまったようだ。下部が斜め内側に張り出しているのも後年補強された時のものだろう。千之通隧道は現状でも充分評価に値する隧道なのだが初代の姿のままならば、かなりの大物であった可能性が高い。実におしい物件だ。と、そこへどこかで聞いたような音が。バ・バスだぁ〜!路線バスが今でも旧道を走っていたなんて秀樹還暦!

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