ドライブ&ツーリングのネタ帳

www.henari1.jp ORRの道路調査報告書 ODA ROAD RESEARCH

〜道路格闘家へなりと闘う鉄馬ヘナリワンの軌跡〜

トップ 国道 県道 里道 林道 旧道 酷道 廃道 隧道 更新履歴 ボンバス 地図 アマゾン 歴史の道 掲示板 サイトナビ お問い合わせ

トップ>隧道電撃ネットワーク>九州>宮崎>崩野隧道の実走調査レポート

崩野隧道

★★★

崩野隧道の前説

熊本は阿蘇にほど近い五ヶ所高原という地に、それは隠れるようにしてひっそりと存在した。新トンネルの完成により、すっかり希薄となった古い隧道、それはかつて県道の最難所であった崩野峠に残された遺物である。ここを生活圏とするドライバーにも敬遠されがちであったという隧道は、今どのような状態にあるのだろうか?現役を退いて久しい崩野隧道の今を訪ねてみた。

崩野隧道

◆崩野隧道1:稜線上の黒点

大分・熊本・宮崎の三県を結び繋ぐ県道8号竹田五ヶ瀬線を竹田方面より西下すると、人家のひとつも無い山中で、取るに足らない些細な分岐に出くわす。勿論そこに標識などの案内板等は一切無く、地元車両にしても旅行者にしても、その分岐点で足を止める者は稀だ。そんな誰一人気にも留めないような小さな分岐の先に、問題の物件はある。稜線上に待つ一際不気味な黒点、それが旧県道の最難所とされる崩野峠だ。

DSC05105.jpg

◆崩野隧道2:平凡な短隧道

頼りなく細い路地の先に見る小さな点は、近付くにつれそれが稜線上に開けられた小さなトンネルであると気付く。対向より漏れ届く明かりの光量と、思いの外大きな出口の径から、照明を必要としないほどの短隧道である事が、遠目からでもよく分かる。埋め戻しや封鎖の措置を免れ、どうやら今でも通り抜けが叶うようだ。上下二段に塗り分けられたツートンカラーの古風な隧道は、パッと見大きな損傷も無く、まるで現役宛らの様相で僕を迎え入れた。

DSC05106.jpg

◆崩野隧道3:よく見るとこの隧道は背負うものが無い

扁額のみが備わる至極シンプルな隧道は、一見ガチガチのコンクリ製に映るが、ゴワゴワとした大きく波を打つポータルが、後年になって化粧直しを施された事を物語る。改修前の姿は想像するよりほかないが、宮崎県とはいえ隧道のメッカである大分県は竹田市と接点を持つ県道だ。そこは純粋な手掘り隧道であったとしても全く驚けない。

しかしこの隧道、先程から何やら妙な違和感を覚える。始めはその原因が何なのか判然としなかった。でもすっきりとしない要因は、すぐに判明した。無いのだ、この隧道には坑門上辺に本来あるはずの土塊が全く見当たらないのである。

DSC05125.jpg

◆崩野隧道4:大型車を通す規格の洞内

通常のトンネルは、稜線上を直接的に跨いでいた旧来の道よりも、ある程度高度を下げた地点に穴を穿つ。鞍部からの距離は地形や地質、工法に工期、それに予算等の都合などから、物件によりまちまちではあるが、鞍跨ぎの道とはある程度の比高が生じる低地に、風穴を開けるのがセオリーだ。

峠にトンネルを穿つとなれば、実際の峠と隧道の間には、小さいものでも数メートル、大きいものでは数百メートルの比高が当然の如し発生する。ところが崩野隧道は、頭頂部に本来あるべき土塊が無く、完全に空を切ってしまっているのである。

DSC05117.jpg

◆崩野隧道5:高千穂側から見てもやはり屋根が無い

現況のみで判断すれば、稜線に穴を穿ったというよりは、左右から際限なく零れ落ちる土砂を避ける目的で、トンネルに見立てた防護措置を講じたと考えるのが自然だ。

崩野隧道は、どこをどう見ても稜線直下に穴を穿ったようには見えず、頭頂部に青空が広がる光景は、まるでボックスカルバートのようだ。その印象は高千穂側に移動しても同様である。

素人考えを承知の上で、僕は声を大にしてこう言いたい。何故切り通しにしなかったのかと。

DSC05126.jpg

◆崩野隧道6:坑門直後に待つ急勾配の路

雪国の一部では、鞍部を直接跨ぐ切り通しの峠に、雪の吹き溜まりを防止する目的で、半円状のシェルターを被せたエセトンネルがチラホラ見受けられるが、崩野隧道はまさにそれに近い形状なんである。だがここは北国ではない。年間を通しても降雪は数える程度、しかも雪が積もるなんて事は稀で、雪合戦など夢のまた夢。そんな雪とは縁遠い火の国において、防雪目的のシェルター隧道など、あるはずがなかろうて。

ところがだ、それは僕のとんだ勘違いで、聞けばこの先には九州で唯一のスキー場があるのだという。

DSC05120.jpg

◆崩野隧道7:切り通しでも違和感のない特殊な形状

なんとそれが人工降雪機だけに頼らない、天然の雪をベースとした本格的なスキー場なのだという。だとすれば崩野峠は、年に数回雪が降る程度じゃ済まないのかも知れない。事実、僕はこの界隈でトンデモナイ証言を得てしまう。

昔はチェーン無しでは峠を越せんかった

どうやら僕の激しい認識不足のようだ。今でこそ少なくなったというが、冬になるとこの界隈はまともな雪が降るらしい。だとすれば崩野隧道は、普段我々が思い浮かべる純粋な隧道ではなく、切り通しに屋根を被せた覆洞の可能性がある。この隧道、どうやらもう少し掘り下げてみる価値があるようだ。

トップ 国道 県道 里道 林道 旧道 酷道 廃道 隧道 更新履歴 ボンバス 地図 アマゾン 歴史の道 掲示板 サイトナビ お問い合わせ