ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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美笛峠(10)

★★★★★

 

美笛峠の取扱説明書

「びふえ」初めてこの峠に挑んだその日から、2006年の今日現在に至るまで、僕はこの峠をずっとびふえ峠と呼んできた。勿論それが正式名称でない事は「長万部=おしゃまんべ」の例を持ち出すまでもなく分かりきっている。難読地名の宝庫である北の大地でアイヌ語を無理矢理宛がった漢字から、ここをピプイ峠と物の見事に言い当てるのは九分九里不可能である。ピプイという響きからは何も想像できないが、びふえという言葉は率直に美しい笛を単純に脳内に描かせる。現に緑一色の深山に一際輝く白い縦笛が浮かぶ姿は、廃道内における一服の清涼剤と言える。向かいの谷で美しい音色を奏でる美笛滝をよそに、ここでは悲鳴に怒号に溜息に吐き気といった、具合が悪くなる一方の、ある意味非常に美味しい展開で、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げておられる美笛峠。その美しい名称とは裏腹に、余りにも凄まじい現場の状況から、ショックで心肺停止も無きにしも非ずというドクターストップ寸前の突破行から早数年。長い沈黙を破り僕は再び北の大地に帰ってきた。経年劣化した廃道の五線譜には今どのような音符が並べられ、またどのようなメロディを奏でるのだろうか?再びあのマックスポイントが死の旋律を奏でるのだろうか?そこに見るは果たして協和音かそれとも不協和音か。へなりカンタービレが美しい笛に隠されたこの峠の真実の姿に迫る。

 

美笛峠10-1/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

荒れ狂う薮の大海は峠より数百m下った地点で急激に鳴りを潜め、そこから先は小春日和のような穏やかな状況が坦々と続き、激戦続きで精も魂も尽き果てた少々疲れマラの僕を現道へと導く。カラマツを主体に白樺が適当に配されたこの辺一帯は、まるでどこかメジャーな高原にでも迷い込んだかのような錯覚を覚える。天然芝を彷彿とさせる緑の絨毯は、まるで緑一色の牧草地を

美笛峠10-2/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

トラクターが這ったかのような微かな痕跡が残され、消えかけたダブルトラックからは年間を通していくらも無い通行車両の残像を僅かに見て取れた。すっかり灰汁の抜けた旧道はうだつの上がらぬ使えない薮道から、ハイキングコースかと見間違えるほど見た目も美しい優美なセクションへと華麗なる変身を遂げた。だがかつてこの道がバスやトラックで賑わう国道だったという事実が、

美笛峠10-3/ORR

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今以って真実味を帯びて来ないのは、当時とは似て似つかぬほどすっかり様変わりした地形改変の成せる業か。林を抜け防風林を失った旧国道は、乾いた風が吹き抜けるだけの草原の様を呈し、干乾びた路面とかつての6m幅を侵食し今では完全なる一車線の林道状態へと追い込んだ熊笹とが、祭りの後の静けさ宜しく廃墟か廃坑のような物悲しさを漂わせていた。それでもこの

美笛峠10-4/ORR

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風景画のような世界には似つかわしくない鉄塔群とそれらを繋ぐ高圧線に、その後を追いかけるように真新しい砂利が蒔かれた新設の作業路とが、周辺の景色に全く溶け込んでおらず、そのギャップが哀愁漂う旧国道の悲壮感を完全に打ち消していた。この道の正体を知らずに迷い込んだ子羊にとって、そこは迷路状と化した縦横無尽に走る林道網の一角に過ぎず、旧国道跡はその

美笛峠10-5/ORR

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中の一本としてカウントされるに違いない。その道が激薮を掻き分けた末に峠へと達し、切り通しを抜け巨石とクレパスの二台障壁をパスした先で再び現道へと合流する昔の道、それも列記とした国道であった事など知る由もない。トンネルある所に旧道ありの鉄則に従えば、美笛峠に旧道の存在を疑う事は容易い。だがそれを徹底的に究明し、かつて車両が通過していた事実を車両の

美笛峠10-6/ORR

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通過を持ってして証明するとなると、赤子の手を捻るような訳にはゆかない。いよいよ現道近しと思わせる幅員の広がりと正面に見える坑門の一部が目の前にチラつき、最後の大仕事であるゲート突破に意識が集中する。だがそれは杞憂に終わった。なんと現道との接点にこれまでその存在がデフォルトとして立ちはだかったゲートが綺麗さっぱり無くなっていたのだ。このフリーパスは

美笛峠10-7/ORR

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嬉しい誤算であった。この後僕は直ちに任務遂行を直接伝えるべくジェット浪越氏のもとへと向かったのだが時既に遅し。とっくの昔に新春かくし芸大会のハナ肇氏と同じ状態になっていた。指圧の心は母心、押せば命の泉湧くガハハハハ!仕方なく僕はエンペラー吉田氏のもとへ向かうべくこの地を後にした。美笛峠これでおしマイケル!

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