ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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厚雲峠(1)

★★★

 

厚雲峠の取扱説明書

渡島と檜山を結ぶ峠として僕は初戦に姫侍峠をチョイスした。そこは幾度となく対戦し、酸いも甘いも熟知した峠であり、何等かの不可抗力や自らのミスで撃沈しない限り勝って当たり前の、云わば格下相手の前哨戦と言える。ところが今度の相手は全くの未知数で、事前情報も得てなければ、突っ込むのも初めて。ましてや現役時代さえ通った事のない、全てが初物尽くし。そんな初めてのお使いシリーズに相応しい厚雲峠の現状にORRのメスが入る。

 

厚雲峠1

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

本州に比べると極端に隧道の数が少ない北海道。そのほとんどが海岸線に集中しており、峠を隧道で越すといった概念はほとんど持ち合わせていなかったようである。それは本州との地形的な違いも大いに関係しているが、ここは極寒の地北海道だ。起伏に富むような僻地に人が住むはずもなく、当然そこに道を通す必要もなかった。

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従って道を通さねばならぬ場所は、必然的に人々もそれほど苦労なく行き来できるような場所、すなわち一般人がイメージするような丘陵地帯やどこまでも続く海岸線などに生活の場は集中する。勿論河川の上流に向かって生息区域を拡大してはいったが、わざわざ険しい峠に道を付けてまで、越して行く事はなかった。むしろ海岸線まで一旦出てから、海沿いを平行移動する事の方が早くて安全で楽であった事は容易に想像が付く。

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考えてもみてくれ、1年の半分以上が雪に閉ざされるような場所にあって、滅多に行き来する事のない山岳方面にわざわざ道を付ける意味がどこにあるのだろうか?それよりも効率的に考えれば海岸線にネットワークワークを張り巡らせ、冬場でも主要都市間の移動が可能な道を、形成した方が遥かに得策ではないか。その都市間においてどうしても越えねばならぬ峠に財を投じ、完成度の高い使える道に仕上げた方がどう考えても良いに決まっている。

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そのどうしても越さねばならぬ主要路線のほとんどは隧道が突かれる事なく、峠へ直登直越えであった。現在トンネルで通されている国道を始めとする各主要路線も、そのルーツを辿れば旧隧道ではなく、廃道と化した峠道にぶち当たる。技術面で言えば隧道掘削も選択枝として挙がったはずだが、何せ時代は国鉄全盛期、道路は二の次で鉄道網を拡充する事に、国を挙げて取り組んでいた時代である。

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それはもう何かに執り憑かれたかのように、ひたすらレールを延ばしていった時代である。何故こんな場所にレールが?という場面は北海道においては珍しい事ではない。特に林道を走っていると必ずと言っていいほどそのような場面に遭遇する。それもかなりの僻地でだ。

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今にして思えば狂っているとしか思えない行為も当時は国策であったがゆえに、将来性や採算性などは度外視で、とにかくイケイケであったのだろう。勾配に限界のある鉄道だ。国鉄は当然の如く隧道を突きまくった。だから隧道掘削の技術はあった。しかし道路において採用まで至らなかったのは、地形的な問題もあるが、当時の時代背景が強く影響しているように思う。

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国を挙げての鉄道網の整備に国家予算が大きく割かれ、そちらに大半の人間が動員され、道路整備には人員も機材も予算も充てられなかったのではないかと。そこで隧道掘削はプランから外され、どの峠も人力のみによる開削が可能な、峠直登コースが採択されたのではないだろうか。

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