ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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迫間峠(1)

★★

 

迫間峠の前説

英虞湾の入り組んだ地形という立地条件の厳しい地域のライフラインを確保すべく重要な任務を任された海沿いの3桁国道。現在急ピッチで整備が進められているが、そこには酷道時代の残骸が数多く残され、この界隈に根を下ろす人々が、いかに過酷な通行を強いられていたかが垣間見られる。中でも一際異彩を放つのが迫間峠だ。地図を見れば何とも不思議な道筋を辿っており、そこには一般的な峠の遍歴が通用しなさそうなのだ。やはり現地へ赴き真相解明に努めるしかなさそうだ。一路現地へ急行した。

 

迫間峠1

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今でこそすっかりリゾート地として定着した感のある英虞湾から始まる当路線沿線には、素朴な漁村を結ぶ狭い旧道が寄り添い、観光道路と化した新道と、生活道路である旧道が共存共栄している。新道には大型観光バスが我が物顔で走り抜け、旧道は時速40キロにも満たない爺っちゃん等が運転する軽トラが主役を担っている。

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橋梁でも海底トンネルでも需要の無さと経済的な問題から永遠に繋がらないと思われる当路線は御座岬で一旦途切れ、海上輸送にて対岸へとバトンを繋いでいる。国道フェリーという事になるのだろうか?その先も国道は呆れるほど生真面目に海岸線を正確にトレースしてゆく。国道が大回りをしている分、県道がショートカットを担うという逆転現象を起こしている特異な地域だ。そんな国道でも海岸線に取り付けなかった場所がある。

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それが迫間峠である。国道がというよりは道路そのものが敷けなかったというとても険しい場所にある。お陰で国道は海沿いから山ひとつ隔てたその裏側を回り込むほど、それまでとは一転して山深い内陸部を通さざるを得ない状況となる。そこに住まう者は自然と漁業ではなく農業に従事し、当路線を介して海物と山物が絶えず行き交っていたのだろう。

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海岸線を離れ山へ分け入ると小さな盆地が現れそこには数十軒の民家が建ち並び、土地のほとんどが田畑という典型的な、日本の古き良き里山の姿がある。山村の中央を真っ直ぐに突く、追い越し禁止のセンターラインに導かれた現道。そこに何の案内もなされていない極平凡な名も無き生活道路がいくつか横切っており、迫間峠へ通ずる道も、その中の1本として紛れ込んでいた。

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現地へ到着した当初はどれが旧道なのか見当も付かなかったが、村を外れてもしばらく現道と並走する細道が視界に入り、その道に目星を付け、早速調査に取り掛かった。現道とは田畑を挟み谷の対岸に向かい合う形で同方向へと進んで行く。このまま行けば橋が架かっていない限り、現道へ渡る事は出来ない。それほどの決定的な落差と広がりを見せた谷筋から、1.5車線の細道は早くも戦線離脱し、現道は視界から消えて行った。

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もしここが旧道ならば、現道が建設中であった頃は、対岸のバイパス工事の様子を、この路線上から行き交う人々は眺め、完成の時を今か今かと待ち望んでいたに違いない。転落したら助からないような深い谷ではないのだが、道中にはガードレールの1本も存在せず、また標識などの道路遺構や、アスファルトにペイントされた白線などの類も一切見られなかった。

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最終人家を過ぎると、もう訪れる者もいないのか、道路上には落ち葉が散乱し、両脇からは植物の侵攻が始まっていた。実幅は1.5車線ある当路線も現在は車1台がやっとの狭い山道と化している。果たしてこれが本当に旧道なのだろうか?そう思い始めた矢先、視界前方を見上げれば、V字曲線を描く稜線が見えてきた。この道は迷わず直進を選んだ。

迫間隧道へ進む

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