ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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棚橋峠(1)

★★★

 

棚橋峠の前説

全道程の八割が海岸線を辿る海沿いのローカル国道は、地形の悪さも手伝ってそれはそれは大変お粗末な規格で、かろうじて細々と繋がっている道を国道指定してしまったという生粋の酷道だ。道中には当然の如し幾多の難所が待ち構えているが、その中でも最たる物件がここ棚橋峠である事は、この峠道を実走した者であれば異論はあるまい。それも現役時代を知る者であれば言わずもがな。当報告書を執筆している現在でも国道指定されているので一応現役の国道ではあるのだが、新道が開通していない往年の時代を知る者の一人として、ここは是が非でも語っておかねばならない峠のひとつであり、旧道化してから随分と日が経った現在でも全く色褪せずにいる事に感動すら覚える。そんな棚橋峠の今を訪ねてみた。

 

棚橋峠1

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2車線路と、その横っ腹にぶち当たる1.5車線路。どこにでも見られる至極平凡な光景も、ひとたびその視線を道路のグレードに移せば、事は簡単に収まらない。今でこそ旧道と化し、停止線が引かれた上に止れの文字まで刷り込まれた日にゃ、どう見ても格下のそれも名も無き町道レベルの道と言われても仕方がないのだが、事実だけを正確に申せばこれで国道なんだな。

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しかももっと弁護して良いのならこの際だから言ってしまうが、旧道化した今でも国道指定を外されていない現役の国道なんだなこれが。その理由は簡単で、峠直下に新トンネルをぶち抜いたまでは良かったが、前後の取り付けが未着工となっており、バイパスが完全な形で整備されるまでは、国道指定しておきましょうというお家事情のようだ。従ってしばらくの間は地図上でも赤く塗られたままだし、おにぎりだってほらね、いまだに現存してるのさ。

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最も小さな橋梁の隅っこのガードレールに刷り込まれたこのおにぎりが、現役を退いた後も消される事は十中八九無いだろう。一般的な支柱に掲げられたおにぎりが全て撤去されたとしても、こいつだけは残ると断言できるほど目立たぬ場所に刷り込まれた小さなおにぎり。歩行者でさえその存在に気付くかどうか分からない程の小さなおにぎりに、今更本来の目的を求めるのは酷だが、それが結果的に極一部の者にとっては功を奏する形となるだろう。

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橋梁を渡った先には旧道化後に即撤去されそうなおにぎりと青看が立っている。これだけ見れば立派な国道と言えるのだが、問題はこの先に山積しているのだ。普通車同士の離合ならば何の問題もない直線路。それがこの先も延々と続くのであれば、騒ぐほどのものでもない。現在は紀勢インター線と名付けられた2車線の県道にその道を譲ったが、ここはかつて錦峠と棚橋峠を連続で越さねばならぬ超の付く難所であった。

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錦トンネルが開通するまでは停止線もとまれの文字も県道側にあったに違いない。今でこそ2車線と化し威張り腐っているが、その昔はせいぜい1.5車線のズタボロ県道であったに違いない。否、県道であったかどうかさえ定かでないのだ。当時は右折して橋梁を渡るのが本線で、橋梁を渡って左折するのが優先であったはず。

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その頃は申し訳無さそうに接続していたであろう県道は、当時単なる市町村道だったかも知れない。それが今では国道側に停止を促す程にまでなった。国道は言う、お前も出世したのう!錦、棚橋の両峠を錦トンネルにて分断する紀勢インター線は快走路となって一躍主要県道に躍り出た。だがそこは腐っても国道だ。転んでもタダでは起きない。

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そう簡単に全てを明け渡すはずもなく、錦峠との分岐から棚橋峠のT字路に至る僅か1kmにも満たない区間のみ、しぶとく国道指定されているのだ。県道にとってはほとんど嫌がらせのような状態で、生きる屍国道の驚異の粘り腰に、最早溜息しか出ないというのが本当の所だろう。

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