ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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野道峠(8)

★★★★

 

野道峠の取扱説明書

日本海と周防灘を縦に結ぶ当路線は、近年全線に渡る改良がほぼ完了し、ネズミ捕りが心配なほどの快走路へと生まれ変わった。かくて越えねばならぬ難所の峠は、全てトンネルで通され、いくつもの旧道が誕生した。中でも特筆に値するのがここ野道峠だ。その下を突いた近代的なトンネルを見る限り、路線変更前は見通しの悪い1車線の単なる山道だろうと思っていた。確かにそれはそうなのだが、野道峠は当路線に残された他の旧道群とは決定的に異なるものを持っていた。まかり間違ってこの世界へと足を踏み入れた者を魅了するものを。

 

野道峠

道路遺構の調査発掘専門サイト:ORRの道路調査報告書

まずは峠の茶屋跡らしき場所を探したが、それらしき跡は見つからない。とは言ってもどこの旧道もそうだが、茶屋跡を示す木柱などが立っていて、初めてそこが茶屋跡だったのかなんて驚く事は珍しい事ではない。野道峠にもその昔茶屋が存在した可能性は充分有り得るのだ。但し国道時代まで営業していたかどうかは疑問だ。というのも野道峠は景観に恵まれず、どんなに周囲の木々を

野道峠

空前のスケールで贈る道路大全:ORRの道路調査報告書

伐採したとしても景色が一変するような地形ではない。また観光的な資源も乏しいこの峠で、営業をし続けるのは限りなく困難に近い。年金暮らしの老夫婦が利益を追求せず、子供達と慣れ親しみたいがために、採算を度外視して運営する近所の駄菓子屋とは訳が違うのだ。もし野道峠がこの界隈の峠では比較的安全なルートとして認知されていたならば、当時はそこそこの通行量があり、

野道峠

お探しの道路がきっと見つかる:ORRの道路調査報告書

それ相応の利用客があったかも知れない。また近代になっては隣接するどの峠よりも、いち早く馬車に対応した規格へと改修されたならば、安全性かつ大量輸送に高速移動が可能な峠道として、重宝がられただろう。だが現代になるとどの峠道も自動車に対応したのは勿論の事、路面にはアスファルトが敷かれ、法面はコンクリのブロックが用いられ、ガードレールやカーブミラーを多用し

野道峠

羅針盤、それは地図とカーナビとORRの道路調査報告書

安全性を高め、線形を緩くし更なる高速移動を可能とする峠が次々と出現した。高度経済成長という波に乗り、周りの峠道は急速にその姿形を変えていった。その極めつけがトンネルの開通である。ほとんど速度を落とす事なく峠を抜けるというそれまでの峠=難所という概念を根底から覆す画期的な方法により、野道峠も例外なく高速化が図られた訳だ。ただ唯一野道峠が他の峠道と

野道峠

www.henari1.jp ORRの道路調査報告書

違っていたのは、改良に次ぐ改良という段階を経ずして、古道状態から一気に近代的コンクリトンネルという最終的な形へ持って行かれた事だ。だがそれは道路史において特筆に値する出来事なのである。もし野道峠のように抜本的な策が各地で施されていたならば、多くの峠道が破壊される事なく、往年の姿を留めたまま、現代へと引き渡されていたはずなのだ。ところが多くの峠道では

野道峠

ヘナリワンドットジェイピー ORRの道路調査報告書

舗装化などのその場凌ぎで、問題を先送りしただけでなく、多くの貴重な道路遺構を破壊してきたのだ。林道に降格した野道峠は我々に語る。旧道のアスファルトを引っ剥がせと。元の姿に戻しなさいと。昔の姿へ戻す事によって人は必ず帰って来る事に行政側はまだ気付いていない。また新たな雇用促進に繋がる事も。敷く人がいてもいい。しかし剥がす人もいないとバランスは取れない。

野道峠

ビストロORR(日刊ORRへの御案内)

アスファルトを剥がさないまま廃道化。それは不法投棄と何等変わらない。旧道の再生=不要になったアスファルトは剥がす事。今それを唱えるともれなく変人扱いとされ、また基金制度も然り。今は異端児扱いの地動説に聞こえるかも知れないが、近い将来天動説にとって変わる日が必ずやってくると信じ、僕は野道峠を後にした。

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