ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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第5号洞門

 

第5号洞門の取扱説明書

青森県弘前市より十三湖や竜飛崎を経由し、津軽半島の突端に近い三厩に至る半島周回道路の日本海側を担当する国道339号線は、全線開通が昭和59年という後発の部類に属するローカル国道である。今や竜飛崎と双璧を成す、云わずと知れた観光名所の階段国道。そのインパクトが余りにも強烈過ぎるがゆえに、当路線における真の難所がどこであるかが語られる事は皆無に等しい。陸上自衛隊第9施設大隊に応援を要請し、何とか開通まで漕ぎ着けた龍泊ライン然り、十指に余る隧道が連発する竜飛三厩間然り。中でも民間資本により幾つもの風穴を開け後に国道昇格へと導いた功績は大きく、地域住民の語り草となる隧道物語はここ第5号洞門から幕を開ける。

 

旧版第5号洞門1byORR

道路専門サイト:ORRの道路調査報告書

ここは竜飛ー&翼の「よがる快調冬こけし」で一躍脚光を浴びた津軽半島は竜飛崎に程近い宇鉄という鄙びた漁村で、まるで演歌の世界に迷い込んだかのようなうら寂しい空気に現場は支配されている。時折護岸を激しく叩き付ける波飛沫も、まるで小節を効かせているかのように聞こえるから不思議な場所だ。

旧版第5号洞門2byORR

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三厩湾の先津軽海峡を挟み対岸に浮かぶ近くて遠い異国情緒溢れる北の大地とは対照的に、本州の北端それも市街地とは隔絶する未開の地という地理的な条件が何となくうら寂しい雰囲気を醸し出し、スマートとは言い難い歪な形状の隧道が、国道339号線のトンネルとしていまだに成立している点も、悲壮感に拍車をかけているような気がして

旧版第5号洞門3byORR

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ならない。竜飛崎人気の火付け役となったのが昭和52年に発表された石川さゆりの「津軽海峡冬景色」で、その時点において国道339号線は龍泊ラインが未開通であり、それから全通に至るまでの7年間は、当区間が竜飛崎へ通ずる唯一の路線として重要なポストにあった。今でも人気は衰えを知らず、大型観光バスが大挙して押し寄せるが

旧版第5号洞門4byORR

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30余年を経た今も高さ4mという制約によって通行車両の制限は解除されぬままである。とは言いつつも今日までただ指をくわえていたという訳ではなさそうだ。というのもこの路線上に竣工当初の原型を保っていると思われる狭い手掘り隧道が幾つか確認できるからである。それらと比較して

旧版第5号洞門5byORR

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この隧道の巨大さは桁外れであり、後年に拡幅された可能性が極めて高い。つまり大型車両の通行を意識し幾度かの改修を経て現在の姿に落ち着いたと考えられるのである。高さ制限標識に梨ノ木間1号とあるので、当初の隧道名は梨ノ木間1号隧道と思われたが、延長が10mほどの短隧道にして一切の装飾を持たない

旧版第5号洞門6byORR

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にもかかわらず、銘板だけは備わっている点が実に興味深い。この程度の隧道であれば名称が不明である事は常だし、聞き込みをしても正式名称が割れる事はほとんどない。しかしそこには第5号洞門と意味深な銘板が添えられ、何かを主張しているように思えてならないのである。名称が隧道ではなく洞門、それも数字のみ

旧版第5号洞門7byORR

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配されるイレギュラーな点、それに前後を予感させる番号と合わせ掘り下げてみる価値は充分ありそうだ。この時点において第5号洞門は国道339号線の平凡な短隧道以外の何者でもないのだが、後にこの洞門が国道トンネル以上の意味を持つ事が判明し、第5号洞門が津軽半島隧道物語の序章に過ぎない事を知るのだ。

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