ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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第11号洞門

 

第11号洞門の取扱説明書

津軽半島を周回する国道の日本海側を担当する国道339号線は、地方の一ローカル国道でありながら抜群の知名度を誇る。今や竜飛崎と双璧を成す、云わずと知れた観光名所の階段国道を求めて観光バスが大挙して押し寄せるほどの大盛況ぶりである。そのインパクトが余りにも強烈過ぎるがゆえに、当路線における真の難所がすっかり陰に隠れてしまっているが、竜飛三厩間に開けられた十指に余る隧道群を抜きにこの路線は語れない。第5号洞門より始まる隧道物語は竜飛漁港に程近い第11号洞門へと舞台を移す。

 

旧版第11号洞門1byORR

道路専門サイト:ORRの道路調査報告書

地方の一ローカル国道でしかなかった国道339号線を全国区へと押し上げた階段国道。竜飛灯台から帯島目掛けてジグザグに急降下する特殊な線形は国道の概念を根底から覆すものであるが、国土地理院の地形図を見ても確かに車道とは程遠い今にも途切れそうなか細い線が国道色でなぞられている。そこはなんちゃって国道ではなく、

旧版第11号洞門2byORR

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国家のお墨付きを得た絶対国道であり、やってやれない事はないと一見破天荒と思えるオーバーアクションも、実は型破りでも何でもない単なるツーリング中のワンシーンに過ぎない事がわかる。鉄の塊で階段を転げ落ちれば、誰もが国道と納得し得る二車線の快走路が平然と構え、その岩壁に巨大な穴が口を大きく開けている。

旧版第11号洞門3byORR

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防空壕よりは遥かに大きく、道路隧道としては少し足りないこの穴が、その昔竜飛漁港へ通ずる唯一無二の生命線であった事実が、後に土地の所有者よりもたらされるのだが、国道に面した坑門からは何一つ手掛かりが得られなかった。ただ穴の奥から対向の明かりが漏れ届き、片面に何等かの物証が

旧版第11号洞門4byORR

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残るかもと僅かな望みを託し、貫通の叶わぬ穴の背後へと回り込む。穴を含む敷地全体が完全なる私有地で二の足を踏むも、息を殺し忍び足で二軒の裏手を進む。垂れ下がる防護ネットと地上からのバリケードはこの穴を完全に封鎖し、一切の装飾を持たぬ坑門は固くその口を閉ざしていた。何か手掛かりはないのか?

旧版第11号洞門5byORR

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あった!国道側からはけして窺い知れぬ裏口の壁面にそれはひっそりと残されていた。第11号洞門、これが国道脇の岩壁に口を開ける小さな穴の正式名称である。と同時にこの穴の正体が、津軽海峡に迫り出す二車線の海岸新道が開通する以前に供用されていた国道トンネルであった事を意味する。洞内は高さが4m弱

旧版第11号洞門6byORR

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幅3m強で大型車一台がやっとという狭さであるが、この先に竜飛漁港が控えている事実を踏まえれば、鮮魚を積載するトラックの往来シーンが如実に浮かび上がってくる。また津軽線の三厩駅と竜飛灯台を結ぶ路線バスも第11号洞門を潜り抜け竜飛漁港を経由していたはずで、三厩駅が開業した昭和33年には現在見る

旧版第11号洞門7byORR

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形状に落ち着いていた可能性が高い。昭和中期以前から口を開けていたとしても何等不思議でない洞門の壁面に見る薄化粧と路面のアスファルトは後年になって肉付けされたものであろう。防波堤も兼ねた強固な護岸を形成する現在の国道は、道路脇に隠れる第11号洞門との関連性を限りなく希薄なものとしている。

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