ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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田鳥隧道(2)

★★★

 

田鳥隧道の取扱説明書

久々子湖、日向湖、菅湖、水月湖、三方湖からなる三方五湖と、それらを周回する観光道路のレインボーライン、幾つもの入り江と鄙びた漁村を結ぶどこか懐かしい風景の常神半島、10%の急勾配が売りの内外海半島のエンゼルラインとどこを走っても絵になる若狭湾国定公園。そんな風光明媚な観光地にも光と影がある。今でこそ改良著しい海岸線を伝う国道162号線が、食見トンネルの開通により小浜から三方まで全通したのが1991年の事。それまでは行き止まりの国道であった162号線沿線に住まう阿納以東の住民は、近年まで県道22号上中田鳥線を唯一のライフラインとし、海岸線の背後に立ちはだかる大山塊の懐に開けられた小さな穴に生活の全てを託した。その重要なポストを二代目に譲り人知れず静かに眠る田鳥隧道の先代を若狭の山中に垣間見た。

 

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まんまとツーリングマップルの罠に嵌められ、危うく下したてのスーツを汚すところであったが、未通線を地図上で繋いでしまう等のミスは珍しい事ではなく、これくらいは許容範囲だろう。お陰で予定外の廃隧道に遭遇したのだからめっけもんと思わねばなるまい。

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てっきり単なる峰越林道と思い路面状況などに気を取られていたが、意識して辺りを見回せば藪の中に「トンネル内通行止」と注意を促す看板が放り投げられているのを見付け、改めてそこが旧県道である事を強く認識した。田鳥トンネルを潜り上中側より県道217海士坂鳥浜線へと進路を取れば、一昔前の分岐点に出くわす。

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現在は右カーブを描く二車線路の格下道に主役の座を譲るも、昭和56年までは左の狭い路地が堂々と主役を張っていた。かつての交差点付近には古風な造りの民家が軒を連ね、往時の賑わいを偲ばせる。まるで明治か大正時代にタイムスリップしたかのようで、そこだけは昔の面影を良く留めている。所狭しと軒を連ねる家々の間を縫うようにかつての主要県道は深山へと分け入る。

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途中で枝分かれする海士坂林道は尾根筋の若狭幹線林道にしっかり繋がっており、地図上の十字路にて描かれる道筋が、実際には上中側のみ下界へ通じていた事で、大ボケをかましている訳でもない事を知った。また田鶴隧道発見後に隧道開通以前の旧旧道跡も疑ったが、田鳥側にそれらしき道筋は見られなかった。

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旧道は二車線幅を維持したまま上昇を続けるも、上中町上水道3号配水池によって完全に行き場を失っていた。山肌は広範囲にカットされ田鳥隧道は消滅したものと思われた。しかし上水施設のコンクリ壁を伝うと、そこには人工的な盛り土が成され、僅かながら期待を抱かせた。

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激藪を搔き分けるとおめでたい事に坑門の一部が地表に顔を覗かせていた。3mと車高を制限するトラ塗りバーと天井との隙間は田鳥側の開口幅を凌ぎ、コンクリの内巻きよりすぐに岩盤剥き出しへと変化する内壁の様子と、大型車一台が精一杯の狭い幅員が確認された。

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最寄駅である小浜線の大鳥羽駅までは直線距離にして約6kmの道程で、大正7年に開業した停車場へと接続させる明らかな意図を持って313mの田鳥隧道が突かれたのが大正13年。以来田鳥トンネルが開通する昭和56年まで現役を張る。坑門付近は後年改修されたようだが、内部は竣工当時のまま今日に至る希少な大正物件であった。

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