ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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尾鷲隧道(5)

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尾鷲隧道の取扱説明書

お宝隧道量産ラインの中に薮を掻き分けずとも、走行中にチラっと確認できてしまうお手軽物件がいくつか存在する。その中でもオーラが出まくって恐れ多くて般ピーではとても近寄り難い隧道がある。その双璧を成すのが先に紹介した三浦隧道とこの尾鷲隧道である。中でも尾鷲隧道は今瀕死の状態にある。近い将来確実に通り抜けが不可能となる運命にあるのだ。それは早ければ来年かも知れない。どうにか持ち堪えて欲しいのだがその運命やいかに。

 

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丑の谷橋を渡ると案の定というか待避所らしき離合ポイントが用意されている。そこまでは今でも車両が入ってきているようだ。というのも土台崩壊箇所の先に簡易ゲートが用意されていて、なんとその先は砂利道となっているのだ。そこには無数の轍が刻まれていて、市街地方面から行き止まりとされる丑の谷橋手前まで何等かの理由で今でも車両が入ってきているのは間違いないのである。

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とにかく驚いたのは、橋を渡ってすぐに未舗装路となった事だ。路線切り替え当時、砂利道のまま現尾鷲隧道へバトンを渡したのは勿論の事、その後もしばらくは市道として使われていただろうし、歩行者用通路を備えていない現尾鷲隧道を補完する意味で、歩道も兼用していたに違いない。当路線では旧道に砂利道が残されている事例は他にもいくつかある。

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だがそのどれも距離が短く、伝説の峠道である矢ノ川峠を除いては、当時のままの姿を留める長距離ダートがほとんど存在しないというのが現実である。歩道や市町村道に転用されたケースではアスファルトもしくはコンクリが打ち込まれ、隧道に至っては坑門のみが当時のままで、坑内は全て現代風にアレンジされ、すっかり生まれ変わってしまっているものもある。

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そんな中にあって尾鷲隧道は全く手が加えられておらず、また落盤もしていない。それに砂利道のまま市街地付近まで旧道は続いているのである。それも砂利道マニアなら泣いて喜ぶ上物のミドルダートだ。当路線において矢ノ川峠は別格として、路線バスも通ったとされる幻の峠、評議峠と並んで貴重な路線である事が、今更ながら判明した。

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新旧2本の尾鷲隧道は、起点こそほぼ同じ場所にあり、最終的に辿り着く目的地も同じ市街地なのだが、実はそのルートが全く異なるのである。ヒントは坑門の角度にあった。市街地に向かって旧道は丑の谷橋を渡して大きな谷の左側に進路を取る。対して現道は右側に進路を取っている。かなりの距離を隔てて互いが睨みあうような形を取り、道中は全く交わる事のない新旧2本の道。

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旧道が引退間近に迫った時、対岸に見える工事中のバイパス道路の建設を、この峠道を常用的に利用する全ての人が皆心待ちにしながら、このガタボロダートに揺られ峠を越して行ったに違いない。道中には警戒標識を始めとする様々な道路遺構が随所に散りばめられ、一部手が加えられている箇所もあるが、そのほとんどは当時の面影を色濃く残したまま、今日まで脈々と受け継がれていた。

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もし丑の谷橋の耐久性が優れていたならば、とっくの昔に旧道は全線舗装化され、正式に歩道へと転用されていた事だろう。いつか通り抜けが叶わなくなるものの、旧道の舗装化は免れるという何とも皮肉な結果に終始しそうな尾鷲隧道と旧道。果たして橋梁の復活案は無いのだろうか?今ならまだ間に合う気もするのだが、このまま没してゆくのをただじっと見守るしかないのだろうか?

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