ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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天辻隧道

★★★

 

天辻隧道の取扱説明書

残念ながら手遅れであった。もう少し早く訪れれば違った結果になっていたと思われる。天辻隧道は平成トンネルと化していた。しかし一部は先代の姿のまま残され、当時の様子を今でも垣間見る事が出来る。先代もコンクリで覆われている為それが初代の姿なのか改修によるものなのかは定かでないが立派な扁額は重要な路線であった事を示している。

 

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吉野杉に囲まれた旧道は天辻峠に向えば向かう程植生の密度を増し、旧道へ入ったばかりの頃はまばらだった杉林も次第に木漏れ日による路面のコントラストも消え失せ、狭いピッチで植林された杉達は我先にと競うように天高く上へ上へと伸びていき太陽光を地上へ通しはしなかった。間伐がしっかり行われていても陽射しを全く通さない薄暗い森と化したその先に天辻隧道が口を開けて我々の到着を待っていた。

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僕は開口一番やってもうた!と叫んでいた。手遅れであった。もう少し早く訪れればと後悔の念にかられた。それも真新しい天辻隧道坑門よりも手前の舗装したてと思える色をしたアスファルトに工事が完了して間もない事が読み取れたからに他ならない。もしこれが23年前のものと明らかに間に合ってないと思われる状態にまでアスファルトが馴染んだ色をしていれば諦めもついたはず。

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しかしどう見ても数日前〜ここ数ヶ月以内のものと思われる状態に納得できない自分がいた。しかしこれが現実である以上受け入れなければならない。掘割の乱れ石を積み上げた石垣の様子からもかなりの大物隧道であった事は疑い様がない。そしてそれはリアルに再現したであろう坑門を見ても確定である。

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門柱、帯石、リングアーチと隧道に必要なパーツを全て持ち合わせていたであろう天辻隧道の姿が忠実に再現された新しい坑門から読み取れる。改修されてしまった天辻隧道坑門だが唯一の救いが扁額と最上部の帯石が竣工当時のものをそのまま利用していた事だ。これを見て随分と落ち着いた。出来ればなるべく隧道には手を加えたくなかったのではないだろうか?

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これは仕方ない苦渋の決断だったのではないだろうか?扁額のみならず最上段の帯石がそのまま流用されている事から僕はそう判断した。冷静に考えれば再現されずに訳の分からない改修を受ける隧道も多々ある中で、これだけ忠実に再現された事は、いかに天辻隧道が地域住民のみならずこの道を利用する人々にとって重要な存在であったかが分かろうというもの。

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そして何よりも封鎖せずにいた事自体が凄い事ではないか。人々はまだ天辻峠旧道を必要としているのだ。今後も長きに渡り利用していくからこそあえて大改修を行ったに違いない。天辻隧道は坑門のみならず内部も完全にコンクリにより覆われ昔の様相を呈していないが僕は反対側の坑門に全ての望みを託した。

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その願いが通じたのだろうか?何と隧道を抜けた先に振り返って僕が見たものは紛れもない先代の天辻隧道の姿であった。勿論完全ではない。恐らく大改修時にリングアーチのみ同時に手直しされたようだが表層が剥がれ落ち凹凸の激しいコンクリの天辻隧道の真の姿がそこにはあった。片面だけでも残したのはまさに賞賛に値する。最後は納得して天辻隧道を後にした。

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