ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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高尾隧道(3)

★★★

 

高尾隧道の取扱説明書

旅人なら誰もが持ち歩き、ORRでも教科書として推奨している某地図は、これまで版を重ねるたびに改良が成され使い勝手も向上、それはツーリングライダーのみならず、四輪のドライバーやチャリダーにも支持され、確実に進化を遂げてきた。現行よりも一回り小さい初代の版で高尾隧道はこう記されている。「シャワー状に降る漏水、中央に排水溝、西日本一の不気味隧道」残念ながら現在手元に残るものには「西日本一の不気味隧道」の部分が印字されておらず、あくまで聞き伝えなのだが、西日本一と謳うからにはそれなりの物件なのだろう。だが目の肥えたORR読者に果たして西日本一の謳い文句が通用するかどうか。それでは問題の高尾隧道をご覧頂こう。

 

高尾隧道・高尾トンネル3

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裏口のフェンスは最初から開放されているというよりは何者かの手によって破壊されているようであった。どこもそうだが、鍵を壊してまで侵入するのは器物破損という、列記とした犯罪であるからして、目的の異なる招かれざる客は別にして、熱烈なる隧道大好き人間の仕業だとしたら悲しい限りである。不法侵入を繰り返す常習犯の僕でも、すり抜けが可能な管理者のミスを突いての

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突破であり、管理者がいるならば許可を得る。そしてどうにもならない場合は素直にあきらめる。あきらめる、それは断念するという事ではない。あきらかに見極めるという意味である。どうしてその日その場で破壊してまで通らねばならぬのか。次に来た時は開放されているかも知れない。再整備されて大手を振って通れるやも知れぬ。また管理者と接触すれば開けてくれる可能性もある。

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隧道は逃げやしないのだ。それに隧道はそこだけではない。世の中には隧道など五万と転がっているのだ。その多くを辿った時、いかに自分が小さなものに拘っていたのかが分かる。強引な突破をするくらいならひとつでも多くの物件をその目で見る事の方がよっぽど建設的だと思う。また忘れた頃にふらりとやってきて、その隧道の前に立ち止まった時、昔の自分が強引な突破を試みようと

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した事を思い出し、当時の自分がどれだけ小さかったかを懐かしむだろう。ひとつの隧道にこだわりを持つのは決して悪い事ではないが、それが行過ぎるとドン引きするような事態も招きかねないので、まずはできるだけ多くの隧道を拝み、目が肥えた所で拘っていた隧道を見てみると良い。その時全く色褪せる事のない当時と同じ心境であったならば、それはホンモノの拘りなのかも

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知れない。あの日あの時僕等は確かに高尾隧道を抜けた。だが今は管理人のおいちゃんもロリエさんの姿もここには無い。あれは幻だったのか?そんな気もする晴れた日曜日の午後、普段よりは人通りの多い旧国道高尾隧道坑口前に置かれたベンチで、僕はひとり寂しく昼飯をとりながら、おいちゃんの口をついて出た昔話を思い出していた。おいちゃんがまだ幼少の頃、ほぼ毎日の

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ように大型トラックが大量の木材を積み込み、高尾隧道を行き来していたそうだ。内壁は今でこそコンクリの滑らかな表層となっているが、中央付近には一部凹凸のあるテボッチャーが残っている。それもコンクリ噴付の薄化粧となっているが、おいちゃんが小さかった頃は岩盤剥き出しで、今の凹凸とは比にならないほどであったという。それは大人が見ても恐ろしい姿をしていたという。

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それは単に恐ろしいだけでなく、木材を積めるだけ積んだトラックの荷台へ、運転席に納まりきらない工夫達が飛び乗り、その内数名がトラックと隧道の飛び出した岩盤に挟まれ落命したという。そういう事故が多発した為後年になって、内壁の突起部分を削り取り滑らかにしたそうだ。そんな逸話の残る高尾隧道も没後十年を迎えた。

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