ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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桂木隧道

 

桂木隧道の取扱説明書

海沿いの強烈物件とは相反し、紀州の山奥に眠る旧廃隧道はどれも比較的大人しい印象がある。熊野古道のDNAを持つ物件は、主要路線としてそれ相応の格好を付けねばならないという世間体やら見栄やらが多分に含まれ、その多くが威厳的とも思える重厚な坑門を持つ。それに対して利用者の大半が地域住民に限定される行き止まりの一般県道では派手な装飾など何の意味も持たず、それ相応の年代に突かれた隧道であったとしても、大半はテボッチャーのままか改修されて平凡なコンクリトンネルに生まれ変わっているかのどちらかで、ここ桂木隧道も例外ではなく、特筆すべき点が見当たらない一般的な旧隧道である。

 

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宇井峠の興奮冷めやらぬ間に、足早に次なる目的地へと向かった僕の目に、最初に映った桂木トンネルはあまりにも眩しかった。緑一色の背景に真っ白なコンクリの坑門は、目立つというより完全に浮いた状態で、強烈な日差しがより一層その白さを際立たせる。山塊を目前にしても慌てる事なく、そのどてっ腹をぶち抜く県道は、ずっと昔からそれが本線であったかのようにすっかり

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馴染んでいた。その昔は目の前に横たわる急斜面の尾根に、真っ向から勝負する術は無く、県道はそそくさと逃げるように迂回していた。その様子は市販の地図からも読み取る事が出来る。旧道は現道によって分断され、かつての本線を見極めるのは難しい状況にあったが、トンネルあるとこ旧道ありの鉄則に従い現トンネル直前の枝道を辿れば、いずれは旧道にヒットする訳で、脇道の先で

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そいつをあっけなく捉えた。普通車同士の離合も厳しい1.5車線路は、山肌を削っただけの林道規格と言える代物で、路面も抜本的な改修はされておらず、砂利道敷きにアスファルトを覆い被せただけに止まっている。しかし現トンネルが出来るまではこの峠道しか存在しなかった訳で、初めて自動車を通した頃と比べたら、幅員の拡幅やガードレール、カーブミラーの設置など、継ぎ足し工事にて

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今日まで凌いできたようで、その跡は旧道上に生々しく残っている。山肌に沿って上昇し続ける旧道は、間もなく稜線が見えるか見えないかという高度に達した時点で、ほぼ直角に切れ込むと側壁の石垣らしき物体が視界前方に確認できた。その先にはコンクリで覆工処理された桂木隧道の姿があった。旧道に規制は敷かれておらず、もしや?と思ったが桂木隧道は現役さながらの様子で、

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そこに鎮座していた。現役を退いた事を当の本人はまだ知らないのだろうか、坑内の照明は点灯したままで、全く人通りが無くなった今も煌々と内部の様子を映し出している。距離が短い事もあってか恐怖感とは無縁の坑内。両坑口から巻かれたライナーは中央付近で途切れ、真の内壁がその姿をあらわにした。凹凸の激しいテボッチャー、それが竣工当初の姿であり、改修前の坑門は

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荒々しいテボッチャーであったのだろう。今ではすっかり落ち着いた面持ちであるが、笠石モドキと扁額のみではほとんど装飾とは言えず、残念ながら評価は下げざるを得ない。坑門脇に隠れるようにして佇むヘキサが、かつてここが県道であった事を物語っているが、評価に大きく影響する事もなかった。だが唯一目立ったのが片側坑門の異常なまでの大きさだ。実は上のコマが坑門全体を

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捉えているのがお分かり頂けるだろうか?入口のドノーマル坑門に対し、往年の塩沢ときを髣髴とさせる出口側のアブノーマルな坑門は何ぞや?だがしかし塩沢ときをもってしても桂木隧道の評価が覆る事は無かった。道中に人家は皆無で、枝道も無い旧道を今更走る者などいない。と思ったら1台の軽トラが爆走していった。ボケ老人か?と一言つぶやき、呆けは桂木隧道を後にした。

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