ドライブ&ツーリングのネタ帳

www.henari1.jp ORRの道路調査報告書 ODA ROAD RESEARCH

〜道路格闘家へなりと闘う鉄馬ヘナリワンの軌跡〜

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青の洞門(1)

★★★★★

青の洞門の取扱説明書

菊池寛の小説「恩讐の彼方に」で一躍有名になった青の洞門。僕はこの小説を読んだ事が無いし、青の洞門に関する歴史認識も持ち合わせていない。従って先入観なく非常にフラットな状態で、この門に挑む事となる。後にこの隧道に関する様々な逸話を知る事となるが、驚くべき事を最初にひとつだけ挙げておこう。それは青の洞門が江戸ッチャーである事だ。僕はそれさえも知らずに洞窟への潜入を試みるのである。

青の洞門1-1

◆ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

追い越し禁止のセンターラインに導かれる二車線路。その先には凹凸の激しい草木も根付き難い奇岩が、道路を塞ぐように横たわっている。手前には横断歩道に信号機、何気ない風景を見て、おやっ?と思ったあなたは非常に鋭い洞察力を持っている。

そう、信号機が進行方向側にしか存在しないのだ。これはいったいどういう事なのだろうか?一方通行道路?だとしたら追い越し禁止のオレンジ線は何の為に存在するのであろうか?この道が主役を張っていた頃の名残?それも一理あるのだが、間もなくその答えが見えてくる。

青の洞門1-2

◆ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

信号が青になると、決壊したダムの如し溜まっていた車両が一斉に飛び出して行く。突き出した奇岩目掛けて全車迷う事なく一目散に駆け抜けて行く様は、F1のスタート時を思い起こさせる。

左は一級河川の山国川、右は岩肌が垂直に切り立つ絶壁に挟まれ、いつ何が起きようとも全く驚けないシチュエーションの中を、歩道付きの二車線路が岩肌目掛け真っ直ぐに突っ込んで行く。

青の洞門1-3

◆ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

第一コーナーは緩やかな左カーブを描く。横に大きく広がる巨大な空洞は瞬く間に全車両を呑み込んでゆく。狭まる幅員に対向車と擦れ違う隙間はほぼ無いに等しい。一種異様な姿をした岩穴を見て、そのまま通り過ぎるはずもなく、当然の如くそこで緊急停車した僕は、急遽徒歩による調査に切り替えた。

なんという広角な坑門なのだろう。かまぼこ型を通り越して饅頭型とでも言えば良いのだろうか?高さに比し横幅が広過ぎす楕円形の空洞は、掘り間違えたか或いは二車線幅への拡張を掘削途中で断念した駄作のようにも映る。

青の洞門1-4

◆ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

しかしよくもまあこんな巨大な穴を掘ったものだ。念の為言っておくが、これ最近掘ったものじゃないからね。坑門には一切の装飾は見られないし、内壁から何からその全てが手掘りも手掘り、完全なるテボッチャーなんである。

正確を期せば、幾度かの改修を経て現在の形に落ち着いた訳で、後年は官主導の下、民間業者が工事を請け負う形で整備されている。だが初動時は、人力も人力、鑿や鍬などの超の付く原始的な方法で、この道は拓かれた。

青の洞門1-5

◆ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

緩い左カーブを曲がり終えると、遥か先まで見通せる直線路になる。洞門の直前まで二車線幅で導いておきながら、この直線に入るや否やこの道は急激に狭まり、幅員は大型車一台の通行がやっとの狭さとなる。一体全体間口のみ大きく広げた思わせぶりな坑門は、何なのだろうか?

将来の通行量を見越し二車線化を試みようとしたのか、或いは歩道を確保しようとしていたのか?様々な理由が思い浮かぶが、実はそのどちらでもない。楕円形の門を潜ると、明らかに自動車の通行を意図して計算された滑らかな断面の内壁と、歪な形状の坑門とのギャップに違和感を覚える。

青の洞門1-6

◆ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

実はそこに謎を解くヒントがあった。測量技術も未熟であった時分に、このような直線を実現させるなど夢のまた夢で、両側から掘り進めた場合、洞内の屈曲や湾曲は当たり前で、貫通さえ叶えば良しとする時代があった。その名残りと最新の技術とがオーバーラップした結果の産物と僕は考える。

今は見通しの利くこの洞門も、かつては蛇行していたものと想像される。自然洞穴の如し中途半端に口を開ける横穴と、計算ずくで綺麗に刳り貫かれた隧道、その二つが合わさったハイブリッドトンネルと考えられるのである。この時を隔て二つの顔を持つ隧道を、人々は青の洞門と呼んだ。

青の洞門1-7

◆ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

当初僕がイメージした青の洞門はこうであった。イタリアの青の洞窟のように、洞内が青色懸かっているのではないかと。それは地図上から察するに、接近する山国川の水面の色が、内壁を青く照らし出すのではないかと想像していた。だが、結果として洞内は青くも何ともなく、ただ単に白かった。

ただこの洞門は、光を多く取り込めるように設計されており、降り注ぐ太陽光と水面の乱反射により、青の洞門は想像以上に明るい。隧道群の隙間に見え隠れする青く輝く水面が、イタリアのそれにゴリ押しできる唯一の材料であった。

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