ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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姫戸隧道(1)

★★★

 

姫戸隧道の取扱説明書

日本三大松島のひとつに数えられる天草松島は、白砂青松百選に選定される我が国屈指の景勝地で、天草五橋を繋いで渡る海上国道から見る風光明媚な景色は、一度目にすれば二度と忘れる事のできない絶景で、しまなみ海道などと並び我が国が島国である事を実感できる数少ない海の上を走る国道のひとつである。日本の道百選にも選定される天草パールラインを陽とすれば、陰にあたるただでさえ交通量の少ないローカル国道に接続する地味な県道上に姫戸隧道はある。全国区の景勝地に程近い場所で誰に知られるでもなくひっそりと世代交代を果たした二弁当峠の古隧道を訪ねてみた。

 

姫戸隧道

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地図上では目を凝らさないと拾えないほど目立たぬ場所にありながらも、その存在を見つけ出し高速移動が可能なロザリオラインを外してまでここへやって来たのは、その特異な名称に惹かれたからに他ならない。二弁当峠、普通に考えれば弁当を二つ持って来ないと越えられないほど険しい峠と読む所だろうが、僕が解読するとこうなる。半額シールは夕方七時半から貼り付け開始。即ち

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争奪戦が勃発し終止符が打たれる五分間が勝負であると。そこで弁当二つを奪取できないようではとてもじゃないが越えられない。そこで苦戦するようでは他の峠を当たった方が良いと。戦線離脱に戦意喪失組それに敵前逃亡犯は黙って海岸通りを行くべしと。確かに二弁当峠への道程は険しい。たいした距離でもないのに海抜0mから一気に200mも上昇するのは半端でない。それに1.5車線

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の狭路が後押しして、ドライバーの気を萎えさせる仕掛けはあちらこちらで垣間見えた。それでも尚ここを通ろうとする者が後を絶たないのは、島を南北に縦断するまともな道が限られているからだ。超大型車も通れるようにこの県道を改良してきた歴史の跡が、1.5車線と2車線を断続的に繰り返す線形となって今も各所に生々しく残り、相当な難工事であった事は想像に難くない。その筆頭が峠の

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隧道という訳だ。八代海を背にしながら前方に聳える稜線を見据えると、目標地点に向かって急な勾配で、脇目も振らずにひたすら峠だけを目指す県道。先に現れたのは真新しい坑門の新トンネルであった。大型車同士の内部離合を許し、24時間照明が消灯する事を知らない眠れぬトンネルがそこにあった。まともな歩道を完備しないのは、ここを通る者が皆無に等しいからなのだろうか?事実

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峠の前後で人家は確認されていない。もしも歩行者があればかなり珍しい者として記憶される。そんな人気の全く感じられない寂しい場所だ。その昔は当然歩行者のみが越し得たであろう二弁当峠も、そこに風穴を開けた瞬間から交通手段は一変し、それまで常用手段であった二足歩行による峠越えの数は急激に衰え、代わって台頭してきたのがエンジン駆動を持つ自動車である。当時はまだ

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持つ者と持たざる者とがはっきりと色分けされており、誰もが自動車を持てるようになった一億総中流社会と呼ばれる今日とは状況が異なるが、現在峠に立つ二弁当峠のバス停から、ここに開通当初より路線バスが通された事は容易に想像がつく。貴族は自家用車、般ピーはバス、彼氏彼女のいない連中はラブワゴンという図式で、大勢が足を車へと転換を図ったのはズバリ昭和初期と見た。

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現道から枝分かれした旧道はあわや鞍を跨ごうかという勢いであったが、稜線直下で息切れしそこに風穴を開ける事で島の南北を結んだ。今でこそ封鎖され遺跡のような佇まいの古隧道も、僅か数年前まで当たり前のように路線バスも走る現役の県道であった。この時点ではまだ隧道名を二弁当隧道とばかり思っていた無邪気な僕であった。

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