ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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美笛峠(8)

★★★★★

 

美笛峠の取扱説明書

「びふえ」初めてこの峠に挑んだその日から、2006年の今日現在に至るまで、僕はこの峠をずっとびふえ峠と呼んできた。勿論それが正式名称でない事は「長万部=おしゃまんべ」の例を持ち出すまでもなく分かりきっている。難読地名の宝庫である北の大地でアイヌ語を無理矢理宛がった漢字から、ここをピプイ峠と物の見事に言い当てるのは九分九里不可能である。ピプイという響きからは何も想像できないが、びふえという言葉は率直に美しい笛を単純に脳内に描かせる。現に緑一色の深山に一際輝く白い縦笛が浮かぶ姿は、廃道内における一服の清涼剤と言える。向かいの谷で美しい音色を奏でる美笛滝をよそに、ここでは悲鳴に怒号に溜息に吐き気といった、具合が悪くなる一方の、ある意味非常に美味しい展開で、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げておられる美笛峠。その美しい名称とは裏腹に、余りにも凄まじい現場の状況から、ショックで心肺停止も無きにしも非ずというドクターストップ寸前の突破行から早数年。長い沈黙を破り僕は再び北の大地に帰ってきた。経年劣化した廃道の五線譜には今どのような音符が並べられ、またどのようなメロディを奏でるのだろうか?再びあのマックスポイントが死の旋律を奏でるのだろうか?そこに見るは果たして協和音かそれとも不協和音か。へなりカンタービレが美しい笛に隠されたこの峠の真実の姿に迫る。

 

美笛峠8-1/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

宅八郎氏が愛用する怪しい紙袋に森高人形と共に収められるマジックハンドと甲乙付け難い汚れたゴッドハンドは、確かにあの日一青年の生命の危機を救った。慢性的に性の欲望に汚染された右手ではあったが、そんな汚らわしいライトハンドも、もし差し出されるのがコンマ数秒遅れていたならば、報告書が世に出ていないばかりか、ORRという存在すら危うかった訳で、美笛峠に魔物が

美笛峠8-2/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

が棲んでいるという噂は真実である。マックスポイントである岩塊を見るたびに、僕は慢性的に性欲に汚染されたロリエさんの右手に感謝する事を忘れない。旧道と廃作業道との分岐点に降り注いだ致命的な岩塊の雨は、廃作業道の僅かな路肩部分を残し旧道部分をほぼ丸ごと呑み込んだ。もしも廃作業道の存在がなければ、完全封鎖されていたであろう美笛峠旧道。信用の置けない

美笛峠8-3/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

廃作業の路肩に車重を預け一旦岩塊を回り込み、旧国道から枝分かれした3m幅の廃作業道に一旦車体を落とし、そこから旧国道を占拠する岩塊の横っ腹目掛けてリバウンドしない程度の低速かつ瞬発力でヒョイと乗り上げ、体勢を立て直してから崖っぷちギリギリに僅かに残されたシングルトラックで、岩の出っ張りという最大の障壁を避けなければ突破できない難解なセクションは

美笛峠8-4/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

トリッキーであるが、そこを突き抜ければ峠の制覇は勿論、完全踏破も約束されるという点で、何が何でも落とせない重要なポイントなのだ。死の分岐点より脱出なれば後は自然と道が開かれる。廃作業道の行く先は滝笛トンネルの坑門手前で、そこは石狩支庁という行政の枠組みの境界線にあたり、その頭上ではお隣の胆振支庁へとバトンが手渡される。つまり峠の鞍部はもうすぐ

美笛峠8-5/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

そこまで迫っているのだ。分岐点を抜けると一度は猛烈な薮に行く手を拒まれるも、もうそれは無駄な抵抗と言えた。激薮の先ではまるで歴戦の勇者を称えるかのように、両脇にコンクリの壁面を従え落石防護金網を備える6m幅のダート国道が真っ直ぐに美笛峠へと導くのだ。直線的な掘割を一目散に駆け上ればそこは家数軒が建つほどの広大な敷地が用意されていた。美笛峠は

美笛峠8-6/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

ほんの少し人間が手を下しただけの天然に近い形状をした頂であった。かつてはここに茶屋もしくは駐車場が存在した可能性は大だが、現在その痕跡は全くと言っていいほど見当たらない。異なる行政区域を跨ぐ訳だから、白看のひとつも見られていいはずだが、サミットの前後を含めても美笛峠には直立する人工物など何ひとつ存在しないのである。それどころか胆振支庁側への下りに

美笛峠8-7/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

入ろうとした瞬間、行き止まりかと思うほどの猛烈な薮に手を焼くのだ。360度どこを見渡しても全く視界が開けず、景色には恵まれない美笛峠。その美しい名称とは裏腹に、現役時代は冴えない峠であった感は否めない。僕が日本一美しい峠と公言してはばからない美幌峠とは対極にある。

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