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矢ノ川峠(6) ★★★★★ |
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矢ノ川峠の取扱説明書 矢ノ川峠、僕がこの峠に初めて挑んだその日から、かれこれ15年という途方もない月日が経とうとしている。若さという勢いを武器に、全国に点在するありとあらゆる廃道を突破してきた僕の前に激しく立ちはだかったのがここ矢ノ川峠であり、僕はこの峠道で己の無力さと、物事には限界があるという事を学習した。あの日以来寝ても覚めても頭の片隅で矢ノ川峠の情景がチラつき、車両による通行を二度と叶わぬものとしたあの忌わしき落橋現場を忘れ去る為に、かんしゃく玉を道路に撒いた事も一度や二度ではない。時には突発的な衝動に駆られ、友人宅にロケット花火を打ち込んだ事もあった。また時には行きずりのおばんちゃんと寝たりもした。でも忘れる事なんて出来なかった。どんなに遠く離れた場所の峠であろうとも、僕はどこかで別の峠に矢ノ川を重ね合わせた。その後も血眼になって全国を渡り歩き、目を皿のようにして矢ノ川峠に代わる究極の峠を捜し求めるも、これ以上の峠を見つける事なんてできなかった。そして月日は流れ、照準は再び矢ノ川峠に向けられた。たかが15年されど15年、僕が無駄に場数を踏んだのでなければ、今なら矢ノ川峠を車両によって必ずや完全踏破できるはず。勿論ただでは済まないだろう。だが矢ノ川の突破なくしてORRの明日は無い。ワンモアタイム・ワンモアチャンス、帝都から遠く離れた彼の地にあって尚僕の心を掴んで離さない魅惑の矢ノ川峠。いよいよ機は熟した。そして2004年5月27日遂に決戦の火蓋は切って落とされた。
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道路遺構の調査発掘専門サイト:ORRの道路調査報告書 【卒塔婆のような転落防止用コンクリート支柱】 ここで目立った道路遺構を今一度整理しておこうと思う。 旧道の起点より地形図に記載のあるないに関わらず、目に付いた道路遺構群は以下の通りである。 懐古橋、紅葉橋、瀧見橋、記念碑、五号隧道、南谷大橋、四号隧道、三号隧道 そして最も重要なのが、僕が若年性アルツハイマーに、国の難病にも指定されているパイパニック症候群を併発している事だ。 |
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道路遺構の調査発掘専門サイト:ORRの道路調査報告書 【地形図に記載される唯一の巨大橋梁傅唐大橋】 パイパニック症候群・・・ 初期症状としては、秋田は田沢湖の奥に湧く乳頭温泉の直下で、有りもしない乳輪温泉を血眼になって探し、無ければ自力でボーリングして新たに温泉を掘削し、乳輪温泉を開設してしまうというとても恐ろしい病だ。 勿論仕切り板はマジックミラーですが何か? |
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道路遺構の調査発掘専門サイト:ORRの道路調査報告書 【親柱の銘板】 また自宅での発症例としては我が子との片乳争奪戦において、ソファーに深々と腰掛け六法全書のような難しい本を読みつつも、窓際での授乳シーンを難読本の隙間からチラ見し、心の中で 「芳男よ、そろそろ離乳してもいいんじゃないか、もう一歳なんだから」 とそっと呟くのが初期段階で、中期ではフジのF1のテーマ「TRUTH」に乗って自ら脳内実況中継が始まる。 |
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道路遺構の調査発掘専門サイト:ORRの道路調査報告書 【尾鷲側より望む傅唐大橋全景】 「おーっと、今日は右からか、それとも左から、右か左か、左か右か、右斜め45度から来たー!ぐんぐん吸うぞ、吸い上げるぞ、バキューム芳男の強烈なマウスエンジンがターゲットを捉えて離さない!」 それでも中期段階であれば、ソファーに深く腰掛けてパッと見は読書している大人しい旦那だからまだマシで、末期は授乳している傍で順番待ち(整理券を握り締め、寂しそうに上目遣いで、姿勢は勿論正座)している姿に、かかりつけのドクターでなくとも 残念ですが・・・ |
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道路遺構の調査発掘専門サイト:ORRの道路調査報告書 【昭和37年に付け替えられた二代目傅唐大橋】 としか言い様がなく、医者も匙を投げるほどの難病ではあるが、医療と道路の融合により学会の発表にも耐え得る報告書へと飛躍的な進化を遂げたのは不幸中の幸いで、既に脳内では映画化へ向け数社からオファーが来ているという状況だ。 勿論創るからには黒部の太陽に比肩するレベルでないとGOサインは出せない。 という訳で現在そういったお話はほとんどお断りしている状態なのだが、どっしよっかな〜と唯一食指が動くのがハリウッドでの映画化で、先方がタイトルを「ヘナリックス」と指定している事に僕が難色を示し、話が頓挫している状態なのである。 |
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道路遺構の調査発掘専門サイト:ORRの道路調査報告書 【熊野側より望む秋の傅唐大橋】 ところが先日「あの反り返りは逆立ちしても出来ない」と先方に伝えた所、あのシーンのみストロングマシン2号でOKとの返答を頂き、クランクインも近しという感触はあるが、やはりタイトルで折り合わないような気がする。 妥協線としては全米のみ「ヘナリックス」、日本版のタイトルはやはり黒部の太陽を強く意識した「杉浦太陽今夜も出発進行!」にしてもらわねば納得がゆかない。 Please let me think a little more こう告げると僕は受話器をそっと置いた。やっぱ駄目かもな・・ |
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道路遺構の調査発掘専門サイト:ORRの道路調査報告書 【錆び錆びのガードレール】 駄目に決まってんじゃん だって全部妄想だもん これが医学用語でいう脳内麻痺ナスターズで、先天性の麻痺ナスターズと後天性のパイパニック症候群、加え若年性アルツハイマーを併発した最早取り返しのつかない重度の合併症は、平成の大塩併発郎と呼ばれても致し方ないのである。 矢ノ川二号隧道へ進む 矢ノ川三号隧道へ戻る |