ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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船坂峠(5)

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船坂峠の取扱説明書

大阪と北九州を結ぶ日本の大動脈とも呼べる主要国道の岡山と兵庫の県境に、海抜145mという山間部にしては屁みたいな峠がある。現在は大型車同士の相互通行が可能なトンネルによって、昼夜を問わず留まる事なく様々な車両が往来し、特に国の根幹を成す道路とは切っても切り離せない大型トラックの通行が目立つ船坂トンネル。現代の殺人的な交通量をその昔はどのようにして処理していたのだろうか?トンネルのある所に旧道ありの鉄則通り、ここにも峠道がある。それが今回のターゲットである船坂峠だ。僕はそこで驚愕の光景を目にする事となる。

 

船坂峠5(兵庫県側)

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船坂峠はとても賑やかだ。県境を指し示す白看は、歩道転用後に設置された可愛らしいミニサイズになっているものの、きちんと両方向供に再設置されている。そして峠に至るまでその全てがコンクリート製で、船坂峠の電柱は完全に付け替えられ、当時のものは現存しないのだと思っていたが、なんと峠だけは現役時代さながらの、木製の電柱がしっかりと残されているではないか。

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しかも本来の立ち位置より、歩道転用後は若干中央よりに移設されたであろう木製の電柱は、レプリカでも何でもなく、当時を偲ばせるものを少しでも多く残そうという関係者の粋な計らいではないのか。それは同じく手前に移設されたと思われる船坂峠のシンボル的存在の郡界標にも現れている。現役時代はこの峠道を行き交う車両達をずっと見つめてきたであろう立派な境石が、歩道となった今でもここを行き交う人々に、そこが県境である事を知らせている。

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車止めによってもうここを行き交う車両はいない。通るとすれば、せいぜい忘れた頃にポツリと現れるチャリダーくらいなものだろうか。ほとんど人々の脳裏から忘れ去られた感のある船坂峠であるが、かつてはここがメインルートとして機能し、とても華やかだった時代もあったのだ。見てくれ、この幅員を。今でこそ両側の側溝があたかもここを1.5車線のように見せかけているが、実はそうでは無かった事を両側の斜面が如実に表している。

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両側供に約45度の傾斜で開削された切り通しは、路面から高さ1mほどが、ほぼ垂直に落とし込まれている。埋設された側溝を取っ払えば両側が1mずつ広がり、そこには立派な2車線が姿を現す事になる。現状のままでも枯葉に埋もれた両脇を掃除してやれば当時の実幅が如実に浮かび上がってくるはずである。

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岡山県側は長く緩やかな上りが続き、その流れは兵庫県側に移っても変わる事はなく、峰越えはきっちり直線で決めてくれた事は非常に好感が持てる。但し兵庫県側は下り始めてすぐに左へとカーブし、そこから先は緩やかに蛇行し始める。その最初のコーナー脇に茶屋跡と思わしき平坦な更地がある。岡山側にも峠の直前にそれらしき更地があり、車両を通す事で精一杯である峠の前後に、茶屋やドライブインなどが存在した事は充分に考えられる。

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今では跡形も無く消え去っているが、それはどの峠とて同じ事。当時から電気は通っていただろうから、水は各地の峠と同じように、井戸を掘るか沢水を利用していたのではないだろうか。更地跡付近には電柱と警戒標識が設置されているが、既にこの時点で電柱はコンクリ製へと戻っていた。

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峠のみ1本だけ木製の電柱を残したのは、やはり意図的であったものと思われる。再び路面中央に緑のセンターラインが現れたのはそれからすぐの事だ。ガードレールの奥には早くもトンネルを抜けてきた現道が姿を現していた。ノスタルジックな世界に浸れるのもあと少しである。

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