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www.henari1.jp ORRの道路調査報告書 ODA ROAD RESEARCH

〜道路格闘家へなりと闘う鉄馬ヘナリワンの軌跡〜

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トップ>旧道電撃ネットワーク>九州>大分>波多方峠の実走調査レポート

波多方峠(1)

★★★

波多方峠の前説

国東半島の内陸部に日向街道と呼ばれる古くから使われている県道の峠道がある。そこに近年長大トンネルが突かれ、かくてその峠道は旧道と化した。実に十余年ぶりの再訪となるこの峠道に、僕は初めて越すが如し新鮮な気持ちで挑み、新旧道の比較によって改めてそこが難所である事を思い知った。交通が途絶して久しい波多方峠、その現状を赤裸々にお伝えする。

波多方峠1-1

◆波多方峠1:石山ダム付近の新旧道の分岐点

最新版の地図を眺めると、それまでのらりくらりと山肌を縫っていた峠道に代わり、やたらと長く太い線が描かれている事に気付く。しかもそいつはツーリングマップルのオススメルートにも選定されていて、山間を豪快に貫いているのである。

はて、僕が知っている峠道は、カーブが連続し、やたらと時間のかかる見通しの悪い狭隘な路と記憶しているが、最新版の地図ではなんとその線が、白線にてなぞられていたのである。それは即ち市町村道への格下げを意味する。

旧道化した波多方峠

波多方峠1-2

◆波多方峠2:茶畑の間を縫う旧県道

大分県道49号大田杵築線、それは二桁の番号が指示す通り、県道の根幹を司る歴とした主要路線である。地図上で緑色になぞられるその県道の先代は、山塊の屋根を伝うそれはそれは険しい道で、所々改良はされていたが、主要県道と呼ぶには些か心許無い脆弱な路であった。

僕がこの峠道を越したのは、もう十余年も前の事である。従ってその間にトンネルの一つや二つが穿たれていても全く驚けないのだが、それにしても地図にみる新道は、核となるトンネル部分だけでも1km超に及び、前後の取付部分も含めると、相当な大事業であった事は想像に難くない。

波多方峠1-3

◆波多方峠3:二車線に拡張されている箇所もある

これは豪い事になったぞ。峠道の大部分が戦力外通告を受けたとなれば、山道の急激な衰退も有り得る。僕の知っている唯一の峠は、今どのような状況にあるのだろうか?安否を確認せずにはいられず、僕は取るもの取らずすぐさま現場へと急行した。

旧道化した峠道に人家が一つも無く生活道路として機能していない道路の予後は芳しくない。維持管理の手間や予算の都合から、峠道の片側が廃止されたり、通り抜けが叶わなくなるケースも珍しくはない。高規格の代替路がある以上、よっぽどの物好きでない限り旧道を利用する者は皆無に等しい。

波多方峠1-4

◆波多方峠4:峠道の大方が1.5車線

すぐ隣を走る県道405号成仏杵築線の城ヶ谷峠のように、峠付近に集落が存在する場合は、新道が開通しようともしっかりと維持管理され、場合によっては路線バスも旧道を経由するなどの厚遇となるが、そうでない場合は前途した通りだ。

人家の一つもない道路となると、その末路は悲惨だ。ちょっとした決壊でも修繕せずに見捨てられ、最悪は全面封鎖や峠道の全線が廃道化するなど、隠居後の余生まできっちりと面倒を看てもらえる保障など無いのが現実である。どこの自治体も懐事情が厳しい昨今、利用価値の無い旧道を整備する余裕など無く、人家のあるないは旧道の生死に直結する。

波多方峠1-5

◆波多方峠5:峠付近に残るヘキサ

僕がこの峠道の行く末を危惧したのも、沿道にひとつも人家が存在しない事を知っていたからだ。

夕暮れというシチュエーションを差し引いても、寂しさ募る人気のない山岳道路の印象は、不安というよりもどちらかと言えば恐怖に近いものがあった。

鬱蒼とした杉林の中を行く狭隘な県道は昼尚暗く、夕暮れともなれば兎に角足早に走り去りたいほど居心地が悪かった。世間と隔絶した峠付近は、ヘキサが唯一のまともな人工物と言っていいくらい、ただただ無の境地が広がっていた。

波多方峠1-6

◆波多方峠6:サミットからの眺望

街灯など無い漆黒の闇の中で、忘れた頃に目に飛び込んでくる対向車のヘッドライトが、どれほどの安らぎを与え勇気付けてくれた事か。山道で彷徨っているのは僕だけじゃない、他にも仲間がいるんだぞと。対向車の前照灯だけが救いであったし、本当にドキドキする峠であった。夕刻であれば今も同じ感覚を味わうのではないかと思う。

但しこの峠は全く違った一面を併せ持つ。それがサミットから望む惚れ惚れするほどの素晴らしい眺めだ。その事を知ったのはずっと後になってからで、何でもっと早く日中の明るいうちに来なかったのかと後悔したほどである。

波多方峠1-7

◆波多方峠7:峠直前の駐車スペース

守江湾とその先に広がる豊後水道の広大な大海原は圧巻の一言で、豊後高田方面からやってきた場合は車内に歓声が沸き上がるのは必至だ。勿論杵築方面から登坂した際も、それはそれで満足のゆくものではあるが、鬱蒼とした樹林地帯で抑圧されている分、峠を越した先に待つこの溜息が漏れるほど美しく雄大な景観に、しばし言葉を失うだろう。

波多方峠から眺める景色の恩恵を最大限享受したければ、迷わず豊後高田方面から登坂だ。車両の如何を問わず苦しい道程の先に待つ絶景は、一服の清涼剤となるに違いない。

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