ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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大峠(6)

★★★★★

大峠の取扱説明書

全国に大峠と名の付く峠は数あれど、最も名の知れた大峠とは福島と山形に跨るこの大峠を指すのだろう。決して派手な訳ではなく、現役時代はかなり地味な存在であったと伝え聞く。僕はこの峠の現役時代を知らない。大峠越えがいかに困難であったのか、旧道となった今では想像するしか手立てはないが、かつてこの道に車両が通っていた時代の再現を試みたい。と、これまでも幾多の勇者達がこの峠に挑み、そして散っていった。他聞に漏れず若かりし日の僕も大惨敗を扮し苦汁を舐めた。だがこのまま黙って引き下がる訳には行かない。狙った獲物は必ず仕留める。だがやってやれない事もある。負け戦と知りつつも男なら逝かねばならぬ散らねばならぬ大峠。道路に人生を捧げた男の生き様を見るがいい。

 

大峠(国道121号線)6-1/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

路面にはチラホラと雑草が根付いてはいたが、その全てを覆い隠すまでには至らず、割と線形ははっきりしている。コンクリの塊さえなければ四輪でも何の問題もない穏やかな道程が続く。まだ尾根に近いせいかほとんどの箇所が直射日光に晒され、日陰と呼べる箇所はほとんど見当たらず、容赦なく照り付ける太陽に身を隠す術は無かった。これまでとは違い詳細な記録を留めるべく

大峠(国道121号線)6-2/ORR

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牛歩の如し低速でスタートえんどストップを繰り返し、可能な限りシャッターを切る。そうしているうちにもじんわりと汗ばんでくるのだがここは大峠、下界では大汗をかく時期にあっても、ここだけは違った。じっとしていれば心地良い風が適度に吹き上がり、それが自身の発熱量を一定に抑えてくれた。但し山の天気は変わり易い。それまでそよ風のように心地よかったものが突如突風に

大峠(国道121号線)6-3/ORR

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変わったかと思うと、今度はピタっと無風になる。それが短時間で目まぐるしく変化する。画像からは匂いと同じくそれらの現象は当然伝わらない。だが無風に見えるような現場では、時折ピューピューと轟音を立てて突風が吹き荒び、それは涼しいと感じる以前にトンデモナイ場所に居る事を強く意識させた。眼下に見える鉱山道路も重機などが慌しく稼動している訳でもなくまたカキンコキンと

大峠(国道121号線)6-4/ORR

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何かを作っている訳でもないのだ。大峠から縦横無尽に走る鉱山道路に動くものなど何一つ存在せず、ある意味時が止まったかのような空間に、自然界から見たら塵に等しい存在の小さな自分だけが、ここに一人取り残されてしまったかのような感覚に襲われ、サイドスタンド1本で支えられている単車が、微妙に揺れるほどの突風が、恐怖心を更に煽り、唯でさえチビリ気味であるにも

大峠(国道121号線)6-5/ORR

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かかわらず、無風と突風は容赦なく繰り返し、この場所が決して安全な場所などではない事を強く訴えかけているようであった。下界を発った時点では雲一つないような快晴であったが、時を忘れ撮影に没頭していたため、気が付けば随分と時が過ぎていたようで、空には雲の塊がチラホラとお目見えし、それが結構なスピードで流れていた。錆び付いた落石防護柵と放置された鉄塔が

大峠(国道121号線)6-6/ORR

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ラピュタに登場するシーンを連想させる。廃鉱に廃道、世界中がオンラインで繋がれた現代とはまるで別世界の様相を呈しているが、これはタイムスリップし異次元に迷い込んだ訳でもなく、ましてや合成写真などでもない。現地へ今すぐにでも駆け付ければ、同じ場面を捉える事ができる。一歩外へ飛び出せばそこにはあなたの知らない世界が広がっているのである。かつてここに多くの

大峠(国道121号線)6-7/ORR

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工夫達が従事していた。多くの車両が行き交った。今では想像も出来ないが、大峠には常に人工的な音がこだましていたはずだ。この峠にも繁栄を極めた時期が必ずあったのだ。檜原峠から覇権を奪い、新時代の幕開けを象徴するこの道も、今はこうして夢の跡と化している。

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