ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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大峠(10)

★★★★★

大峠の取扱説明書

全国に大峠と名の付く峠は数あれど、最も名の知れた大峠とは福島と山形に跨るこの大峠を指すのだろう。決して派手な訳ではなく、現役時代はかなり地味な存在であったと伝え聞く。僕はこの峠の現役時代を知らない。大峠越えがいかに困難であったのか、旧道となった今では想像するしか手立てはないが、かつてこの道に車両が通っていた時代の再現を試みたい。と、これまでも幾多の勇者達がこの峠に挑み、そして散っていった。他聞に漏れず若かりし日の僕も大惨敗を扮し苦汁を舐めた。だがこのまま黙って引き下がる訳には行かない。狙った獲物は必ず仕留める。だがやってやれない事もある。負け戦と知りつつも男なら逝かねばならぬ散らねばならぬ大峠。道路に人生を捧げた男の生き様を見るがいい。

 

大峠(国道121号線)10-1/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

間髪入れずに現れる次のセクションは更に酷いものであった。鉄骨は完全に倒れている訳でもなく、下を容易に潜らせてくれる訳でもなかった。第一セクションとは難易度はまるで異なり、我々は途方に暮れた。第一セクションでは鉄骨のマスに金網が現存していた事で何とかゴリ押しする事もできた。しかし第二セクションではマス目に金網が無く、鉄骨上に単車を乗せる事が不可能で

大峠(国道121号線)10-2/ORR

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突破するにはたった二つの方法しか存在しない。ひとつはかつての落石防護壁の裏側を通る方法。そこは道でも何でもないが、突破という事だけにこだわれば、単車を力任せに持ち上げる事で何とか抜けられるかも知れない。しかし鉄骨が今にも地べたに着いてしまいそうな程までに倒れ込んでいる手前とは違い、進めば進む程赤い鉄骨のシャアはその重たい首をもたげ、我々の行く手を

大峠(国道121号線)10-3/ORR

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拒むのである。120度近い広角であった山側の斜面と鉄骨との空間は、かなりの自由度があるのに対し、奥へ行けば行くほど80度近くまで閉じてしまい、最悪は脱出不能になる事も予想されるが、滑落という危険は全くない。もうひとつは路面から僅か20度程度の隙間を残し倒れ込んだ鉄骨の下へ単車を倒し潜らせる事であるが、こちらは直接死の危険に晒されるのだ。というのも倒れ込んだ

大峠(国道121号線)10-4/ORR

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鉄骨の先端は既に道路上から外れ、そこには落ちたら二度と戻っては来られないであろう断崖が待ち構えているからだ。我々は慎重に検討した。まずは単車が通れるだけの幅が本当に残されているかを、実際に単車を倒して確かめてみる。崖っぷちギリギリに倒した単車は、そのまま引き摺れば何とか通過できそうな事は分かった。しかし単車を引き摺る本人は崖下へ身を置かねば

大峠(国道121号線)10-5/ORR

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ならない。そう、こんな風にだ。単車が落ちる事はないのだが、本人が滑落してしまう危険性の高いルートを我々は選んだ。それは旧道上に倒れた鉄骨が、手前から2本だけ極端に倒れ込んでいるだけで、そこさえ抜けてしまえば後は楽勝だからだ。それに対し鉄骨の裏は安全と引き換えに尋常でない体力の消耗を強いられるし、抜けきれるかどうかはやってみないと分からない。よってリスクを

大峠(国道121号線)10-6/ORR

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承知で我々は崖っぷちに身を沈め、単車をジリジリと引き摺った。踏ん張って足に力が入ると、足元を支えていたはずの土砂は音を立てて崩れ、そのたびに片手で掴んでいる鉄骨に全身の重さが伝わった。それでも鉄骨はビクともしない事が唯一の救いであった。片手で単車を押し、片手で自身が滑落しないように鉄骨を力一杯に掴む。こんな危険な箇所は出来るだけ早く抜けたい。軟弱な

大峠(国道121号線)10-7/ORR

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足元では踏ん張りが効かず、単車を少しも浮かす事が出来ない状態では1回に10cm程度前進させる事が関の山であった。そうして牛歩の如し超アナログ的戦術で最大の難関を我々は突破した。技術もないテクもない体力もない我々の推進力を支えているものはたったひとつ。それが気合だ。

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