ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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黒原越(2)

★★★

 

黒原越の取扱説明書

一通り日本の主要林道を把握すれば、次に向かうは行き止ま林道か廃道、或いは点線道と相場は決まっている。点線道のほとんどは幅員1.5m未満の、登山道以上林道未満の怪しげな道なのだが、中には四輪の通行も可能な美味しい道に当たったりもする。複数の点線道が束になってかかっても、その牙城を崩す事は容易でない険阻な峰に、唯一車両による稜線越えが叶う路線がひっそりと存在する。それが僕の脳裏に焼き付いて離れない黒原越と呼ばれる峰越林道である。

 

黒原越A1/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

すっかりフィレオフィッシュ騒動で林道どころの騒ぎではなくなってしまったが、気を取り直して詳細な報告に努めたいと思う。と、その前に大事な事なので念の為再度確認しておくが、ヌーブラじゃないよノーブラだよ。以上お嬢様方への業務連絡でした。さて僕が初めてこの山脈越えに挑んだのはもう15年も前の事で、全くの手探りで挑んだ初戦の状況は散々なものであった。視界20mもない

黒原越A2/ORR

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濃霧の中で僕は迷いに迷った。それは迷走なんてレベルではなく、遭難に近いものであった。視界不良という条件化での未知なる林道調査は、無謀そのものであった。崩れた土砂や倒木を乗り越え、分岐に次ぐ分岐のラッシュに、いつしか僕は自身の進むべき方向さえ失いかけていた。濃霧につき目標物が見えないのは当然だし、この道がいったいどこへ抜け出るのかさえ見当も付かないと

黒原越A3/ORR

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いうお粗末な状態は、現在のスタイルからすれば比較にならないほど幼稚なものであった。祖母山を越え大分県へ抜けるという今にして思えば常識外れもいいとこの、全くとんでもなく壮大な目標を掲げたものだが、それも若気の至りというもの。但し単なる無知からその発想に至った訳でもなかった。既にその頃の僕には確信めいたものがあったのだ。現代テクノロジーをもってすれば道を通せ

黒原越A4/ORR

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ない場所など無いに等しいと。僕は土木を学問として学んだ事も、現場に従事して汗水垂らした経験も無い。だが僕には誰よりも多くの現場を見てきたという経験値があった。百聞は一見に如かずと林道のみならず、日本中のありとあらゆる道を見てきた。その眼が祖母山を車両が越せるだろうと言っているのだ。現に尾平越には隧道を突いたではないか。ただ技術的には可能であっても、環境問題

黒原越A5/ORR

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や土地絡みの問題に、公共工事には莫大な資金や利権、それにまつわる触れてはいけないエトセトラが加わり、この世に生を授かれなかった路線は枚挙に暇がない。日本百名山に選定されている祖母山に、地図には載らない峰越ルートが存在する可能性は限りなくゼロに近いが、それでも僕は最後まで望みを捨てなかった。生活に観光に予算を消化する為にと、道路は様々な理由によって、

黒原越A6/ORR

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毛細血管が拡張するかの如しその枝を伸ばしてきたが、山奥で目にする機会が多いものとして失業対策道路が挙げられる。読んで字の如し失業対策の切り札として登場し、工期の長さは労働者に安定した就業を約束し、また発注元がお上という事もあって、安定した収入も約束される公共工事の代名詞的存在の失業対策道路。今更祖母山に林道を通すはずもなく、僕は遠い過去に置き去られた

黒原越A7/ORR

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

失業対策道路に一部の望みを懸けた。どれだけ廃れていても構わない、とにかくどこかへ抜けていれさえすればいい。その一心で僕は濃霧に包まれた深い森の中を彷徨った。舗装路から数えて二番目の分岐点であるこのT字路の案内板に安堵したのが、まるで昨日の事のように感じられる。

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