ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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厚雲隧道(1)

★★★★

 

厚雲隧道の取扱説明書

土地の形状や寒冷地やどの諸条件によって峠直越えが大半を占める北海道において、山中のそれもたいした交通量のない道道の峠に、珍しく隧道で突かれた峠がある。正確な峠の名称は定かでないが、名称が厚雲隧道とされている事から厚雲峠としたが、新トンネルには山蕗の名が冠されている事から一筋縄ではゆかなそうだ。もっとも正確な名称を掴むとか、歴史的な事を掘り起こそうなどという気はさらさらないのだが。歴史の闇に葬り去られた厚雲隧道にかつて車両が通っていた事を証明し、直接手を合わせ報告書にて供養できればそれでいい。

 

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厚雲隧道1

三度襲った激薮の先で、遂に光明が射した。そこには紛れも無い倉庫があった。そ、倉庫?そう、倉庫。だってシャッター付いてるじゃん。これが倉庫じゃなくてあんだっつーだよ。しかし誰が使うんだこれ?そこでここまでの道程を軽く整理してみよう。まずはチェーンゲート、その後には激薮の第一波。そこを抜けると第一橋梁、橋を渡ると激薮の第二波。続く第二橋梁、そして激薮第三波。

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厚雲隧道2

どう考えても通勤圏内、な訳ねーだろうが。僕はヘナリワンのエンジンを止める、恐る恐る目の前の怪しい物件に近づいた。その倉庫の上部には何やら四つに割かれた文字が並んでいる。遠目から見てそれが住友生命でない事だけは明らかだった。また焼肉定食でもないようである。耳を澄ましても物音ひとつしない静寂な山中にあって、僕が薮を掻き分ける音だけが響く。時折風に

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厚雲隧道3

吹かれてシャッターがカタカタと微弱な音を立てただけでもドキっとする。何度も言うが、ここは本州ではないのだ。ヤツがねぐらとして利用しており、今こうしている瞬間にも、どこかこちらからは見えぬ場所から、じっと息を潜め獲物を捕らえるべくチャンスを窺っているやも知れぬ。全く油断のならぬ場所なのだ。そして遂に倉庫の前に辿り着き上を見上げた。そこには厚雲隧道とあった。

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厚雲隧道4

ここが峠?トンネルとコンビニは確か24時間営業のはずだが、何故シャッターが閉まっている?ってか現役の頃からこのシャッターは設置されていたのか?その可能性もなくはない。何せここは極寒の地北海道だ。それもたいした人通りもない深い山中であり、何と言っても現役最後まで未舗装路だった道だ。隧道で越すとは言え、当然冬期通行止めであったはず。だとしたら長く閉ざされる

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厚雲隧道5

冬の間はシャッターが閉じていてもおかしくはない。しかし現役のトンネルでシャッター付きのものは記憶にない。従ってこのシャッターは路線切り替え後に付けられたと考えるのが自然だ。だがいったい何の為にだ?いやこれまでも何度もこのような物件は見てきた。それは農作物や生花などの貯蔵庫として再利用されている隧道達だ。酒の保管やきのこの栽培、中には雪をぶち込む

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厚雲隧道6

所もある。そうかそうか、ここも何かの貯蔵庫として使われている訳か。という事は逆側が細々と整備され、今でも四輪が入って来ている可能性が高い。ならば廃道区間は片側だけか。もし何かに再利用されているならばシャッターの向こう側には何かが眠っているはず。幸いシャッターは路面から30cm程度跳ね上がっていた。そ〜っと下から覗き込む。中は意外や意外充分な広さを

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厚雲隧道7歴史の道踏査報告書

有する空間が広がっていた。路面にはコンクリが打ってあり、内壁は全てライナーで補強されている。反射板まで設置されているが、照明類は無かったようだ。幅員はそれまでの道程とは打って変わって普通車同士の内部離合を可能とする完全な2車線仕様だ。これが厚雲隧道の正体である。

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