ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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九人ヶ塔隧道(1)

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九人ヶ塔隧道の取扱説明書

国東半島の付け根に位置する別府と中津の丁度中間付近の山中に、ゆくゆくは重要な土木遺産に指定されるであろう希少価値の高い隧道が眠る。近年宇佐市に吸収された院内町と安心院町。かつて隣り合っていた二つの町の境界線上に、その昔から人馬の通行さえ容易ならざる急坂険路の難所が立ちはだかっていた。明治末期においても依然として交通途絶であった九人ヶ塔峠に待望の風穴が開くのだが、ここは日本一の石橋の町を謳う旧院内町である。現存するターゲットの材質構造が石積みでなければ嘘である。手掘り隧道である可能性も多分に含む中、僅かな期待を胸に第一次調査に赴いたのが2000年の秋。そこで僕はいきなり全国区の超レアな代物を目にする事となるのだ。

 

九人ヶ塔隧道と市道の分岐点

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

九人ヶ塔トンネルの直前で左へ折れる旧道は、すっかり廃墟と化したモーテルの前を横切る。それがいつ頃から存在するものなのかは定かでないが、爺さんの話では一度は開業に漕ぎ着けたそうだが、水道を引くための費用を捻出できずに瞬く間に廃業し短命に終わったという。その後取り壊し費用もままならない事から見るも無残な姿を今日まで晒し続けているのだが、これが厄介な問題の火種となっているのだ。

九人ヶ塔隧道への進入路

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廃モーテルと廃隧道という組み合わせの妙はいかにも何かが出そうな雰囲気で、適当に作った噂話のひとつでもでっちあげれば即心霊スポットの完成である。また両者共に封鎖されている点がひどく信憑性を高め、招かれざる客を無駄に誘発しているという現実があり、散乱するゴミの量が珍客数の多さを物語っている。

藪にうずくまる九人ヶ塔隧道

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土木建造物としては全国区の天城山隧道に比肩する極上物件であるのに、恐らく九人ヶ塔隧道の実力に気付いていないであろう行政が下した封鎖という措置が、結果的に意図しない事態を助長させてしまっているのは残念でならない。シーズンオフでも猛烈な枯れ枝に阻まれ近づくのも容易でない堀割の先に、僅かに顔を覗かせる漆黒の空洞。それが大正期に穿かれたと思われる総切石積の道路隧道、九人ヶ塔隧道である。

総切石積の九人ヶ塔隧道

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国土地理院1/25000地形図からも姿を消した幻の隧道は、幸いにも落盤等の大規模な崩壊も見られず、ほとんど無傷に等しい良好な状態を保っていた。初見のインパクトは相当で、地形図から消え去った隧道が現存それも無傷で貫通していた事に加え、総石積という全国的に見ても極めて稀な構造体に度肝を抜かれた。よくよく考えてみれば石橋日本一を謳う旧院内町に片足を突っ込んでいる訳で当然と言えば当然なのだが、それにしてもここまで見事に的を射てしまうと逆に本当に石なのか?と疑りたくもなる。

九人ヶ塔隧道の扁額

ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

実際に石仕立てのコンクリなんて平然と存在する訳で、その辺のところを爺さんにぶつけてみると軽やかステップでこう答えてくれた。

ストーン・ストーン・湖池屋ストーン!

ストーン・ストーン・湖池屋ストーン!

カリっとサクっと美味しいストーン

カリっとサクっと美味しいストーン♪

九人ヶ塔隧道の最大幅

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間違いない、材質は明らかな石である。更にキャメラはこれが大正期の築造である紛れもない証拠を捉えた。扁額には大正二年と刻まれている。御馴染山形の廃道の隧道リストでは竣工年が不明となっているが、まずは竣工年が確定した。

九人ヶ塔隧道最大高

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続く長さ・高さ・幅員の各スペックであるが、リストに見る数値とパッと見の印象に大きな相違があり、せっかくなので計測してみる事に。幅は地べたで5m、高さは中央付近の最大値で3.5と判明。これを有効値に変換すると高さ3m幅4.5mとなり、リストとの相違が鮮明となった。

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