ORRの道路調査報告書:全国の廃道隧道酷道旧道林道を個人が実走調査したレビュー

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棚橋隧道

★★★★

 

棚橋隧道の取扱説明書

他のどれにも類似するものが無く、そのルーツがどこにあるのかさえ判断のつかぬ独特の形状をした坑門を持つ棚橋隧道。これがもしも一般道路であったとしてもそこそこの評価をされるだろうが、国道のそれも事実上現役となれば、道路のグレードを重んじる当サイトでは、評価をワンランク上げざるを得ない。棚橋隧道の希少性についてはどこの流派にも属さない突発的な構造に、専門家の意見も大いに分かれるであろうが、僕個人の意見としてはどこの流れも汲まないオリジナル製に一票を投じる特異な隧道である。

 

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ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

先の見えぬ道程をえっせらこっせら上り詰めてくると、やがて注意を促す標識が見えてくる。そこから見上げると木々の隙間には稜線が見え隠れし、もうこれ以上登坂を続けようとしない平坦路になった事で、峠に達した事を知る。あっけなくもあり、長くもあった苦行の終わりは余りにも突然で、峠までの逆算距離などが示されない中にあって、実距離以上に長く感じた峠道もいよいよクライマックスを迎える。

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当路線は人の手などそう簡単には入らぬほどの、険しい山塊に付けられたまさしく山岳道路のそれであるが、下界から猛烈に吹き上げる突風は密度の濃い木々に遮られてか、遮断するものが何もない峠付近においても道路上は極めて穏やかであった。但しそれとは変わって何やら妙に重く冷たい空気がじんわりと首筋にまとわり付いてくるのを感じる。

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その先に特異な形状をした隧道がある事を僕は経験上知っている。勿論地図上に示されるトンネル表記から、どんな遠隔地からも棚橋峠にある隧道の存在だけは予備知識として持ち合わせる事は可能だ。だがそれがいったいどのような形状をしているのかは、自身の見識や経験値からでしか判断は付かない。だがどれほどの場数を踏もうとも、ここ棚橋峠ではちんけな一般常識など一瞬にして吹き飛んでしまうのだ。

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ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

まず第一印象であるが、隧道というよりは、王家の墓に通ずる巨大迷路への入口という面持ちだ。それまで砂の奥深くへと埋没し何千年という時を日の当たらぬ場所でじっと過ごし、幸か不幸か現代人の手によってその遺跡が発掘され、完全な形で掘り起こされた現代に甦る王家の墓。内部はとっくの昔に盗掘に遭い、もぬけの空であったみたいな。

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ドライブ&ツーリングのネタ帳ORR

中央部には石棺だか木棺だかが置かれていたようだが、それさえも何者かの手によってどこかへと運び出されてしまったみたいな。そのような有りもしない想像を掻き立たせるには充分なインパクトを持つ棚橋隧道。コンクリで仕上げられた坑門は狭いながらも途中に段差を設けるとか、笠石もどきを配置してみたりと、装飾に随分と気を遣っているのが分かる。そして注目すべきは両脇の側壁だ。

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単なるコンクリ壁ではなく、下段をコンクリ敷きにし、上段を石積みにするという気合の入れよう、それも強度とは関係無しに装飾一辺倒であるのは明らか。二段変則の側壁と坑門が一体化して見えるのも単なる偶然などではなく、意図的に仕掛けられたデザイナーのテクなのだ。もしもこの坑門が偶発的でなく、手本があったと仮定するならば、その形状から最早あの隧道以外には考えられない。

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それは鐘ヶ坂明治隧道だ。幅員に対する異常なまでの高さ。二階建てバスの登場を予見するかのような構造に思わず身震いさえするが、実際問題棚橋峠を路線バスは越えていないし、峠区間に突入する際に十二メートル以上の車両は通行できませんとされている。だが常識外れな構造は片面だけに留まらない。

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